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「この仕事が、世界を変えるんだ。」石坂産業の姿勢から学ぶ見学リポート。(里山編)

Less is More.by info Mart Corporation

日本企業として初めてAmazonが主導する「気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)」に署名した石坂産業株式会社のリポート。前回の工場見学に引き続いて、今回は東京ドーム4.6個分もの敷地面積のおよそ8割を占める里山「三富今昔村」を見学する。

海外40カ国以上から視察団を迎え入れている産業廃棄物中間処理工場が、本気で続ける環境保全の一端に触れていただければ非常に嬉しい。

↑工場編はこちら。


今回もガイドは石坂産業の清水さん(写真)。「三富今昔村」のマップを前に里山見学がスタート。

里山の入口/くぬぎの森交流プラザ-一般の方も利用できるカフェラウンジとしても機能する。

一般の方もふらりと立ち寄れる「くぬぎの森交流プラザ」。「おいしい体験」や森のパン工房で焼き上げる自家製天然酵母パンの購入だけでもOK。里山保全費を払えば、奥にある広大な里山を散策できる。

-この里山に入口でもある交流プラザはどういう意図で運営されているんですか?

清水:そもそもは、工場編でお話した通り、地域の方々との関係性をもっと良くするために、多世代コミュニティの場にしていきたいと思って作られた施設です。祖父祖母・父母・子供と世代を超えて楽しんでいただける場としてスタートしました。

-なるほど!

清水:都市部でいらなくなったものを処理して、できる限りリサイクルできるように処理しているのですが、一般の方ってなかなかゴミがどのようにリサイクルされているかってわからなかったりしますよね?

-工場見学でも、それは痛感しました。

清水:こういった一般の皆様が気軽にいらっしゃることができる場所をきっかけに、実際私たちがどうやって処理したり、リサイクルしているかを知っていただくと、モノの使い方が丁寧になったり、モノの選び方、買い方が変わると思うんですね。

-確かに、自分自身が買ったり捨てたりすることをもっときちんと考えないといけないと思いました。

清水:そういったきっかけになって欲しいと思って運営しています。もちろん環境について知ってもらうという目的もありますし、地域の皆さんにもご利用いただくということもある。この場を通して廃棄物処理や、私たちの思いが伝わるといいなと思います。

交流プラザは、地元を支えてきた養蚕農家の家屋をオマージュして中二階のある環境教育施設として運営している。平日にも関わらず、非常に多くのお客様で賑わいを見せていた。

-中はすごく心地いいですね。

清水:一つ一つのこだわっていて、経年劣化を楽しめる木を使うことで、時を経るほどに、触れば触るほどに魅力が増すようになっています。もう一つ注目していただきたいのがこの中二階から出ているダクトです。

清水:このダクトは、地中熱を利用した空調で、できるだけ電気を使わず心地よく過ごせる仕組みなんですよ。

-すごく徹底して、環境への配慮をされていますね。

清水:できるだけ、あるものを活用していく方がいいですから。

プラザの裏手から、里山見学へ。

清水:こちらは、「VEGETABLE SCHOOL」です。旬の野菜を味わう野菜のスクールです。ここでさまざまなイベントやワークショップもおこなったりしています。

友國:ライブ演奏付きで夜も楽しんでもらえるイベントなども行っています。

さまざまな角度からお話をしていただけた友國さん。

8つのエリアに分かれる広大な里山。

これは、里山「風のヤマ」のほんの一角。当日も多くのスタッフが里山整備に精を出していた。

-それにしても植林とかの規模じゃないですよね!ものすごい規模です…。

清水:ありがとうございます。風/香/結/育/陽/光/伝/集という8つのコンセプトでエリアが区切られています。

-これは、全部石坂産業さんの敷地なんですか。

友國:敷地の大半は元々こちらの土地をお持ちのオーナー様からお借りすることで成り立っています。企業の力で買い上げるのではなく、地元の皆様との信頼関係を醸成するためにも、お借りして運営することが大事だと考えているんです。

-あぁ。すごく素敵な考え方ですね。

友國:例えば、オーナーさんから買収して、オーナーさんがこの地域から引っ越されてしまうかもしれませんよね。私たちの活動が地域コミュニティを分断してしまうきっかけになってしまうかもしれない。そういったことにも配慮して、この里山を保全・運営しています。

こちらも「風のヤマ 」とても心地よい森林。整備が行き届いており、適度に歩きやすくなっている。
こちらは「香のヤマ」。左手にチラリと見えるのは「ファイヤーサークル」。冬場は焚き火を楽しめる。
「結のヤマ」には、遊具も。休日は子供連れでも賑わう。
こちらも「結のヤマ」。池をのぞくとメダカやギンブナが生息している。

-通常の企業ですといわゆるCSR(corporate social responsibility/企業の社会的責任)の一環として環境保全をやられていたりしますが、これほどの規模はすごいですね。

友國:私たちは、ずいぶん前からCSRではなくCSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)が重要だと話しています。自分達の活動そのものが社会の価値の創造につながることの重要性は、どの社員と話していても自然とみんな実感しているように思います。少しだけ驕った言い方をさせていただくと、石坂産業のこういった活動は、CSRとしてアリバイ的にやっていると思われたくないんです。

-確かに、とりあえずCSRやっておこう。という姿勢の企業は多いですもんね。

友國:そういう気持ちは1mmもないんです。私たちの活動が未来を少しでも良くすることにつながっているという価値観が社員全員自然と徹底しているんです。

-SDGsが叫ばれて以降、少しずつ変革はしているとはいえ、多くの企業ですとCSR活動などは社員からも理解を得づらい状況は未だあるように思います。

友國:私たちは、産業廃棄物中間処理工場の運営だけしていても評価されなかったかもしれません。CSV活動で本気の姿勢を見せることで、一つのブランドとして注目されたきっかけにもなりました。ソーシャルな価値がきちんとグローバルからも評価されることが実証できた。ですので、「こういう活動をするくらいなら給料を上げろ」といった議論は出てきません。

-社会的な価値がきちんと評価されること、石坂産業に訪れると身をもって体験できる気がします。

「結のヤマ」のこどもの水辺は、これからの季節にもぴったりだ。
「結のヤマ」の奥にはなんと神社も。
エリア内を巡れる「やまゆり鉄道」。いくつかのエリアを子供の目線で巡れる。

SDGsよりずっと前から。

-近年ではSDGsという分かりやすい基準ができましたが、石坂産業さんは1999年から随分と長い期間、SDGs的な活動をずっと続けてこられていますね。

友國:今では、私たちも社会的な共通言語として「SDGs」という伝え方をしています。

-こういった活動が直接的な利益につながる実感みたいなものもあるんですか?

友國:「信頼できる会社だね」って思ってもらえるのが、最大の価値だと思います。これは綺麗事ではなくて、事実として私たちの業界には不法投棄をされる心無い業者さんもいらっしゃいます。そういう業者さんに依頼することは、クライアント(排出事業者)様にとって、非常に経営リスクの高いことなんです。

-あぁ。産業廃棄物処理業者さんに任せたから安心だろうって思っても、依頼後はどうなっているかわからないですもんね。

友國:こうして、工場や里山を見て「石坂産業は廃棄物をきちんと責任を持って処理してもらえる会社だ」と思っていただくことが何より大事です。私たちは、工場においても非常に細かな分別をしたり、コストのかかることをたくさんしている。でもそれが私たちの責務として理解してもらえるクライアント様が増えていると思います。

清水:実際に私たちをご指名いただけるお客様も増えています。

友國:利益になっているという実感はあります。里山運営だけをビジネス的な収支から見ると赤字です。直接的に利益につながっているというよりは「風が吹けば桶屋が儲かる」というような構造かなとも思いますが、私たちは確実に意味のあることだと考えています。

-「風が吹けば桶屋が儲かる」っていうのを社員みんなで信じられるというのはすごいことです。

友國:代表の芯の強さがなければ、今の私たちの考え方には到達できなかったと思います。なにしろ、こうした経営にシフトした1999年にはSDGsという言葉すらない時代でしたからね(笑)。

-大変な苦難がおありだったと思います。

「集のヤマ」には、ピザ小屋やパン工房、くぬぎの森カフェなどが。

友國:ここで楽しめるピザやパンは、敷地内で育てた有機小麦を使っています。

清水:「くぬぎの森交流プラザ」で提供しているパンもここで作られているんです。

-小麦も育てているんですね!すごい…。

友國:隣の「光のヤマ」のポートリーガーデンでは、ニワトリやヤギを飼っています。

「光のヤマ」のポートリーガーデン。

自分達が率先して変わることで、世界が変わる。

-え!?ニワトリ!?なんでですか?

友國:単に鶏が飼いたい訳ではなく、日本では「アニマルウェルフェア」という概念が浸透していなかったので、それを知っていただくきっかけ作りとして飼っているんです。

-アニマルウェルフェア?

友國:えぇ。通常の養鶏ですと、ニワトリをすごく狭いゲージに閉じ込めて、クチバシを切ったりして卵を産めるだけ産んで処分するような飼い方をしています。私たちが食べるためとはいえ、”動物との関係ってそれでよかったんだろうか?”と考え直すために、私たちは平飼いでオーガニックの餌で育てています。

-本業からすると、かなり分野外のことではありますよね?

友國:私たちが伝えたいのは、自分達が試していくこと、変わり続けていることで、ここを訪れた皆さんが少しずつ変わっていくことなんです。この里山にしても最初からこういったカタチを理想としていたわけではなく、ダイオキシンの風評被害から始まり、工場を建て替えて、最初は道の清掃くらいの活動から始まっているんですね。

-あぁすごく地道な活動からスタートしているんですね。

友國:そういった小さなアクションから始まり、少しずつ里山を整備すると、動植物が戻って来ることがわかりました。生物多様性の保全や回復に関する取り組みを定量評価するJHEP認証において、最高ランク(AAA)をいただくまでに里山は回復してきました。そうするうちに、地元の人々から、ぜひ開放して欲しいとおっしゃっていただけた。少しずつ地元に愛される場所になってきたんですね。

-はい。

友國:そういうことが起き続けてきて現在の里山の規模になっているんです。ですから、本業に関係ないように見えても、アニマルウェルフェアという考え方をひとまず私たちが率先することで、少しずつ世界が変わるきっかけになるんじゃないかと思うんです。

里山と工場が同じ敷地内で違和感なく馴染んでいるのも素敵な光景だった。

これからの世界で失いたくないもの。

友國:こういう里山が身近にあると自分の子供が未来にこういう場所で遊んでいる姿みたいなものを思い描けますよね。すると社員一人一人の考え方は違っても、少なくとも自分自身の子供の世代に豊かな未来を残したい思いは共通してくると思います。こういった考え方は、今の世界を生きるものの責任として、必要なことなのかなと考えています。

清水:自分達の日々の仕事がどう社会の中で機能しているかなど、日常的に自分達が考えていることや、抱えている問題意識を一緒に考えて、変えて行けたり、進めていけるというのは、すごくやりがいがあることだなと考えています。言葉ではうまく言えないんですが、石坂産業がこういった取り組みを始めて20年以上経っているので、社員たちも意識しなくても、取り組みを理解して、自然に捉えている。現在の石坂産業での働き方は、まさに社会にも貢献できるし、すごく満足度が高く働けていますね。楽しいですし、やりがいに満ちているんです。

Less is More.

自分が毎日手がけている仕事に胸を張れているだろうか。社会にとって、未来にとってそれは意味のあることなのだろうか?
こう言った疑問は、実は誰もが考えたことがあると思う。それを諦めず実直に長い年月をかけて実行してきた石坂産業の姿勢は胸を打つものだった。
写真とテキストでは伝わりきらないほどの感動があり、帰路の合間、スタッフ一同自分達の仕事の在り方をもう一度、考え直していたのが印象的だった。

案内していただけたお二方は「ぜひみなさん、私たちの工場や里山を見にきてくださいね。」とおっしゃった。興味がある方は、ぜひ訪れてみて欲しい。

この場を借りて、長い時間、丁寧に付き添ってくれた友國さん・清水さんに心よりの感謝を申し上げる。

(おわり)


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