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クラフツマンシップが、失われたレシピを蘇らせる。伊良コーラ代表・コーラ小林氏インタビュー

クラフトビールにクラフトコーヒー、クラフトチョコレート。「クラフト○○」は一過性のブームを超え、新しい定番となっている。「手芸品・民芸品」といった「クラフト」本来の言葉の意味が拡大され、多義的な解釈になった事もブームが定着した要因のひとつではないだろうか。さて、コーラは手作り出来ないという既成概念を打ちこわし、世界でたった一人のクラフトコーラの職人になり、専門店「伊良コーラ(いよしコーラ)」を立ち上げた人物がいる。伊良コーラ代表のコーラ小林氏にお話を伺った。

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コーラ小林:1989年・東京生まれ。和漢方職人「伊東良太郎」を祖父に持つ。北海道大学農学部、東京大学大学院生命科学研究科卒業後、大手企業に勤務しながら、大好きなコーラ作りの探求を進め、2018年7月に世界初のクラフトコーラ専門メーカー・専門店「伊良コーラ(いよしコーラ)」を立ち上げる。世界で一人のコーラ職人。 

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↑伊良コーラ(いよしコーラ)総本店下落合
世界初のクラフトコーラ専門メーカー・専門店。東京・下落合の自社工房で、コーラ職人によって作られる、世界で唯一のクラフトコーラ。

二年半の歳月と、和漢方の調合技術が伊良コーラの味を決める。


ーコーラ作りをはじめたきっかけを教えてください。

コーラ小林:元々、自身が偏頭痛持ちで、コーラに含まれるカフェインの成分に偏頭痛を和らげる効能があるのではないか?という噂話を耳にしたのがきっかけでコーラに興味を持ちました。そこからコーラマニアになり、ネットサーフィンで手に入れた「コーラのレシピ」を参考にコーラ作りを始めた。という感じです。

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ー自身で作る。となると、かなりのハードルがあるような気がしますが。

コーラ小林:会社員時代、帰宅しては理想の味の追求を繰り返していたんですが、その時は趣味というか遊びでやっているような感覚が近かったです。期間にすると約二年半ぐらいです。

ーその二年半の試行錯誤の末、レシピを完成されるわけですが、伊良コーラの味が決定的に決まる瞬間はあったのですか?

コーラ小林:それは明確にありました。今まで作ってたものと全く違う味に仕上がった事があったんです。

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ーそこには小林さんのお爺様、和漢方職人の伊東良太郎さんの調合技術が決め手となっているとお聞きしたのですが、具体的にはどういった技術のことだったのでしょうか?

コーラ小林:全ての材料を水で一緒に煮込む。ということではなくて、材料ごとに適した火の入れ方をするみたいな部分です。スパイスは全部で12種類あって、そのスパイスと柑橘類をどういう風に混ぜていくか。というのもポイントです。

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上:スタッフのみ立ち入り可能の調合室にはシロップを生産するための様々な機械が置かれている。
下:コーラ小林氏の祖父である伊東良太郎氏が営んでいた「伊良葯工」は、漢方の加工などを行う工場。店内には、その頃の什器や道具が残されている。

顔の見えるものづくり、思いを注ぐやり方

ー会社員時代から、移動販売車であるフードトラック「カワセミ号」でマーケットイベントなどに参加されているとお聞きしたのですが、何か参考にされたビジネスモデルがあったのでしょうか?

コーラ小林:会社員だったので、土日の休日を利用して出店する方法が、物理的にもフードトラックしかなくて、そのような選択をしました。
今振り返って見ると、他のやり方も色々とあったかもしれないな、と思います。

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移動販売車である「カワセミ号」。フレッシュな伊良コーラをその場で提供可能。
※今後の出店スケジュールはHPのイベントページをチェック

ーマーケットイベントやポップアップに手応えはありましたか?

コーラ小林:そうですね、はい。勿論今でも売り上げは継続的に伸びていて、3〜4倍のペースです。規模自体は大きくなっています。

ーどうしても「クラフト」という部分が大量生産においてハードルになるのではないか?と思ってしまうのですが、その点はどうやって解決されたのでしょうか。

コーラ小林:クラフトの定義にもよると思うんですけど、自分は作り手の魂が籠っているかとか、顔が見えるものづくりをやっているかという部分が大事だと思うので、そこに関しては、仕組み化だったり、作り手が思いをどのように注ぐかという部分で解決出来る問題だと思っています。

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ーなるほど。「伊良葯工」の跡を継続するかたちで拠点とされた理由もそういったところにあるのでしょうか?

コーラ小林:そうですね。結局ルーツが大事だと思っています。伊良コーラという屋号に「伊良」を引き継いでいる事もそうなんですが、全ての原点がこの場所なので、まずはここから始めようと思いました。

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ー今後はどのような展開を考えられているのでしょうか?

コーラ小林:このお店のような、その場で作りたての伊良コーラを味わう事も出来るし、シロップ等の商品も購入できる形態の店舗を増やしていきたいと思っています。商品の展開は、炭酸で割った状態のすぐに飲めるボトルのものがあって、今後はこれがメインになっていく予定です。

ー今現在、どのくらい生産されてるんですか?

コーラ小林:工場はほぼ毎日稼働させていて、看板商品のボトルの商品でいうと、何万本という単位で生産を行なっています。

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シロップに炭酸が充填されていてそのまま飲む事が可能なボトル商品。店の外に設置された自動販売機より購入可能。自動販売機はコーラ小林氏自らカスタマイズされた。

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実際に伊良コーラを作っていただいた。店内では作りたての伊良コーラがテイクアウト可能。パウチを使用したパッケージにオリジナリティを感じる。

ーどこか懐かしい甘さもありながら、スパイスの風味が追いかけるような圧倒的なオリジナルテイストを感じるのですが、小林さんにとってコーラ味の基準はどこにあるのでしょうか?

コーラ小林:基本的にはコカ・コーラをベンチマークにして作っています。オリジナルコーラの全てがコカ・コーラだと思っているので。ベンチマークにはしつつ、コクや深みをアップデートしていくイメージで手を加えてますけど、軸はぶらさないようにしています。

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↑ロゴのモチーフであるカワセミは、アウェーな環境である水中に自ら飛び込み、魚を捕らえることが出来る。コーラは「クラフト(手作り)できない」「体に良くない」といった常識や既成概念へ挑戦していく意味がロゴに込められている。

ー材料はどのように調達されているのでしょうか?

コーラ小林:自ら商品を探しに行くのが基本的な動きです。コーラの実に関しては、自ら現地(ガーナ)で調達しています。

ーガーナ!すごい。やはり直接現地へ行かれる事で刺激を受けている部分なども大きいのでしょうか?

コーラ小林:仕事で海外に行ったりする時は、とにかく色々なことをインプットしようという目線があるので、お店づくりやパッケージなどのものづくりをする上では参考にしています。意外かもしれませんが、コーラづくり自体に直接的に影響を受けている部分っていうのはあまりないんです。

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↑コーラの実

これからの世界で失いたくないもの。

ー最後の質問です。小林さんにとって、これからの世界で失ってほしくないものとは、なんでしょうか?

コーラ小林:うーん。名前とかは失われてほしくないですね。もの、こと、文化、人の名前など。言葉には魂が宿ると思っているので、名前は大事だと思います。

ーお話をお伺いして、小林さんが「魂」という部分を非常に大切にされている事がわかったのですが、なにかきっかけはあったのですか?

コーラ小林:常日頃から、人間は何のために存在しているのかとか、哲学的なことを考えていて、小さい頃からいろんなことに疑問を持つ子どもで、世の中がどうなってるのか、世界の仕組みみたいなところにすごく興味があって、なんでこれはこうなってるんだ。いろんなことを追求していくうちに世の中の真理みたいなとこにすごく興味がでてきて、いろんなことをずっと考えてるうちに、そういう部分が大事なんじゃないかと思うようになりました。

ーありがとうございました。

Less is More.

はじめて伊良コーラを口にした時、その味わいの奥深さに魅了された。口あたりは甘いがしっかりとした強さがあって、味の表情は段階的に変化し、飲んだあとに爽快感と刺激が残る。「贅沢すぎるコーラを飲んだ。」そんな気持ちになった。本インタビューで、小林氏は何よりもルーツや魂、クラフツマンシップ、そして物語を大事にされている。と感じた。その小林氏の信念がそのままコーラの味として表れているように思う。

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(おわり)

photo:Kamedamokei







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