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失われた物語の復興。揺らぐ世界で空想を守るために。ショートショート作家・田丸雅智氏インタビュー

2010年代、書店の棚には多くのビジネス書が並び、小説は影を潜めていたように思う。物語性が軽んじられていた時代と言えるのではないか。私たちはいつからか、「空想」をしなくなった。しかし今、ビジネスの現場でも真に求められているのは、ビジネス書にある金言よりも、想像力に起因するクリエイティブな感覚である。それを磨くため、空想し、書くことを薦めるのがショートショート作家の田丸雅智氏だ。作家でありながら、子どもから大人までを対象にその楽しさを伝え、企業にも出向きワークショップを開いている。そんな田丸氏に伺った。今、この世界に「物語」が必要とされる理由とは?

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田丸雅智:1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化、カンヌ国際映画祭でも上映。自らが発起人となりショートショート大賞や、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。

ショートショートとの出合い。

ーそもそもショートショートを書こうと思ったきっかけを聞かせてください。

田丸:僕はもともと作文どころか、読書すら苦手だったんです(笑)。そんな僕に読むことの面白さを教えてくれたのが、ショートショートだったんです。小学生の頃から好きだったのですが、高校生のとき、なんとなく自分で作品を書いてみたんですよ。それを友人に見せたら「面白い」と言ってくれて。それからです。「あ、小説って自分で書いていいんだ」と意識して書き始めたのは。

ーなのに、理系に進むんですよね?(笑)

田丸:そうなんです(笑)。家系的にも大工や造船職人など、モノづくりを仕事にする人が身近にいたこともあり、工学部へ。大学院にまで進学したんですが、勉強をするにつれて「自分のいちばんやりたいネイティブなこと」ってなんだろう?「モノづくりのもっと奥にあるもの」ってなんだろう?って考えていくようになったんです。

ーそれは、何だったんですか?

田丸:突き詰めてみると、「生み出すこと」そのものだったんです。だから、モノづくりも小説作りも源泉は同じでした。

ー当時もショートショートは書き続けていたんですか?

田丸:はい。大学での研究よりショートショートを書くことのほうがしっくりきていました(笑)。工学もショートショートも、生み出すという点では同じですが…例えば物を投げると、重力の法則で落下しますよね。僕がやりたかったのは、落下せずにそのまま飛んで行くような、現実では起こらない世界をつくることの方だったんです。だから、ショートショートの道へと進みました。

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誰にでも物語を紡ぐことができる。

ー今、世の中では「物語」が重視されているように思います。例えば、ひとつのプロダクトを売るにも、「手作りした」とか「特別な柄をデザインした」とか、そこに「物語」が求められているように感じます。田丸さんは「物語」をどう捉えていますか?

田丸:想像力によって普段とは違う時間軸を広げてくれるのが物語だと思います。過去に遡ったり、未来を想像したりすることで、今その瞬間の事実を多面的に見られる。そこに受け手が想像するだけの余白が生まれることで、深み、厚みとなり、普段とは違う感覚を得られるものだと思います。

ー物語をご自身で書くだけではなく、「ショートショートの書き方講座」と題して、皆さんにも書くことを薦めていますよね。その動機とは?

田丸:結論を言えば、「自分が楽しいから」なんですけど(笑)。ショートショートという世界があることを知ってもらい、仲間を増やす楽しさもありますし、教えるという行為そのものも好きなんです。

↑田丸さんの講座の様子。

ーその内容を拝見すると、いわゆる個人のサロン化のように収益を目的とするのではなく、「社会や世界のため」という思いを感じます。

田丸:そうですね。基本的には「楽しいから」なんですけども。空想の力で世界を彩って行けたらいいな、と思って活動に取り組んでいます。人は空想すると、物事をいろいろな角度で見ることができるようになります。空想をすることで現実が多層的に捉えられるんです。

↑田丸さんのオンラインサロン。

ー多層的?

田丸:ひとつの物事や事件も色々な切り口から観れることができるようになるということです。一人一人がそういう多層的な視点を持つことで、もっと生きやすくなり、もっと多様性も生まれると思います

ーなるほど。

田丸:ただ、空想するだけでは刹那的で、自分の中だけで終わってしまいます。そこで、誰かに伝えるための、そのひとつの手段としてショートショートをオススメしているという感じです。ショートショートという形態で物語にすることで、お互いの想像をシェアできると思うんです。

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ー最近は、自分が空想したことを誰かに伝えるという個々のスキルが落ちている気がします。それはTwitter的に、脊髄反射的な発言や思考になっているというか。ショートショートという形態は、その対抗策の一つにもなっているのではないでしょうか?

田丸:確かに、そうかもしれません。ショートショートという物語にすることで、むき出しの空想のままでなく、伝えるためにデザインするんですね。ひとつ伝えるための工夫があるので、そこに理性が介在するのかもしれません。

ー講座を受講した生徒さんの中には書くことが苦手という人もいますよね?

田丸:今まで創作経験者から、作文が1行も書けないという方まで老若男女、様々な方が参加してくれました

ーそんな方々がどう変わっていくのでしょうか?

田丸:やはり変化が顕著なのは作文が1行も書けないという方で、半ば困惑されますね。「書けちゃった…どうしよう」って(笑)。

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ー教える時には、メソッドに沿ったワークシートを使っていますよね。

田丸:はい。小学校でも教えるんですが、作文が苦手な人でも…本当に誰でも、ワークシートを埋めていけば物語をつくれるようにメソッド化しています。ステップを踏むだけで書けてしまうので、楽しくなって「なんだこの感覚!」と、気分が高揚する受講者の方が多いので、嬉しいです。

↑ワークシートのダウンロードもできる。

ーそれは、すごいですね。物語がかけることで、パーソナリティに変化がおきたりもするんですか?

田丸:そうなってくれればいいなと、強く願ってはいます(笑)。ただ、定期講座もありますが、1回きりの講座が多いので、日常への浸透がまだまだ弱いというのが課題です。ダイエット器具を買った直後は頑張るけど、しばらくすると、使わなくなるように…(笑)ぼくは有志で400字小説を投稿できるサイト「ショートショートガーデン」というものもやっているのですが、細くとも長くショートショートに親しんでいただける場をもっともっと増やしていきたいですね。文章がかけるようになるのは、すごい自信にも繋がる強い体験だとも思いますので。

ーメソッドを覚えてしまえばいつでも書ける、というのが良いところでもありますね。

田丸:そうなんです。ワークシートは、僕の中にあるいちばん分かりやすい発想法を具体化したものなのですが、これを使って空想するキッカケを掴んでほしいんです。僕が高校生の時、初めてショートショートを書いた時のように、「自分で書いてもいいんだ」という気づきを得てもらえると嬉しいですね。そこから先は、このメソッドを自由に使っていただいたり、ぜひ自分なりの方法を見つけていっていただけたらと思っています。

ーちなみに、年齢…大人でも子供でも関係ないんですか?

田丸:よく、子どものほうが発想力が豊かだとか、頭が軟らかいって言われますが、断じてそういうことはありません。僕の肌感覚では、大人も子どもも一緒。ただ、大人の方が硬そうに見えるのは、常識やルールでガチガチに縛られているからなんです。常識やルールを外してあげると、子供と変わらないくらいに柔軟な発想を持っています。教養や経験がある分、むしろ大人が作った物語の方が、多様で面白いものが多いように思います。

ーそうか、引き出しが多いからアイデアも多様なんですね。

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これからの世界で物語が担うもの。

ー今後の世の中で、物語は何を担って行くと考えますか?

田丸:ひとつ、社会に対して物語にできることがあると思っています。例えば、社会問題や政治的な問題があったとします。そうだな…「差別問題」を例に考えてみます。

ーかなりセンシティブな話題ですね。

田丸:おっしゃる通り、そういうセンシティブな話題に関しては、ファクトで問題定義することも大事かと思うんですが、実際の内容は悲惨だったりします。また、「思いやりを大切に」「差別はダメですよ」などの言葉を並べても、すでに良くも悪くも耳慣れてしまっていて、心に響きづらくなっていますよね。そこで、「差別はダメ」という既存概念を伝えるための物語を作ってあげる。すると、考えるキッカケになる。物語の設定に没入してもらうことで、他者の目線で既存概念を捉えらえる。物語はそういう役割がひとつありますね。

ー確かに。読み手が物語の主人公になれるので、共感しやすいと思います。

田丸:そうですね。没入感は、僕がとても大事にしているものです。物語は、自分と全く違う状況で、理解が及ばないものに、考えるための補助線だったりスロープを付けてあげるようなものだとも考えています。例えば、量子力学の理論を伝えても、難解で理解しづらいですけど、量子力学を扱った楽しい物語になっていれば、少なくとも興味を持つきっかけにはなりますよね。哲学や科学や経済や、一見すると難解そうなものを取っつきやすくするためにも、補助的な役割を担えると思います。ひとつ間違えると物語はフェイクニュースにも成り得てしまうので、そこは気をつけつつ、ひとつの手段として考えるといいと思いますね。

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生存本能に従い、世界は物語を喪失した。

ーここ10年…2010年代はビジネス書が台頭し、物語(小説)があまり注目されなかった時代でした。この現象をどう分析されますか?

田丸:個人的には、3.11の東日本大震災が1つの転換点だったのかなと思います。震災によって建物、カルチャー、歴史。なによりたくさんの命。物語をはらんだ膨大な数のものが失われ、途絶えてしまいました。つまり、物語を喪失したんです。しかも、その悲惨なことが、より身近でリアルなことに感じられる日本で起きてしまった。

ー物語を超えるような映像が毎日のように流れていました。

田丸:そうですね。それ以降、世の中に即効性のある実利的なものが増えていったような肌感覚はあります。それはもしかしたら、失われた物語性を回復することよりも、「日々生きなければならない」という生存本能が優った結果ではないかと捉えています。実利的なもの…その日を生きるために必要な情報や物資、お金に直結するものを本能的に求めた結果なのかなと。

ーなるほど。

田丸:物語って“究極的には必要ないけど、豊かな毎日には必要なもの”だと思うんです。この10年、それを楽しめるほどには経済的にも精神的にも回復しなかった。物語とは、それがなくても生きていける、余白の世界なんですよ。ただ、余白のないことで、心が殺伐としてしまうのも事実ですよね。

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田丸:社会が殺伐としてしまっても、原因が“物語がないこと"だとは、その状況に陥っている中だと自分では気づきにくいものなんですよね。もちろん殺伐とした社会の原因は物語の喪失だけではなく、複合的な理由があるとは思いますが、ひとつの大きな要素だと感じます。

ー「なんか最近殺伐とした感じがするな」で終わってしまいますよね。

田丸:物語がないから、想像力も失われ、余計に物語を必要としなくなる…完全に負のスパイラルに陥って、ドツボにハマったような世界になってしまいますよね。なので、もう一度、物語の大事さに気づいてもらうことで、失っていた人間性を回復できるのかもしれません

ーそうかもしれませんね。

田丸:もちろん、この10年間、小説や読書が好きな人や業界から、ポジティブなアクションもたくさんありました。出版社や本屋さんが、「読書っていいですよ」「読書は楽しいですよ」という発信を続けてきたのは素敵なことですし、これからも絶対につづけていくべきだと思います。ただ、同時に、それだけでは足りないなとも感じていて。アプローチの方法に多様性が必要だと思っているんです。

ー「読書っていいですよ」「読書は楽しいですよ」って言われても「知ってるよ!」で終わってしまう。

田丸:そうですそうです。言い続けることはもちろん大事なんです。でも、みんなが耳慣れてしまって、「じゃあ読もう」というアクションにつながりづらくなっている。その次のアクションへとつなげていくために、別の方法も駆使していかねばならないのではと思っています。その僕なりのアクションのひとつが、僕の開いている書き方講座なんです。いっそ「書いてみませんか?」と。

ーあ、書くことで、物語のファンを増やすんですね!

田丸:はい。僕が「書くっていいですよ」と薦めた先に、書き手が育つことは当然として、読み手を広げるのが真の狙いです。国語が嫌いな小学生が、僕の講座で「書けた!」という経験をすると、小説に興味を持ってくれますよね?そのときこそ、これまで言い続けてきた「読書っていいですよ」という言葉が響いてくると思うんです。最初の1歩を踏み出させてあげれば、その先にある読書するための環境はとても芳醇で、様々なコンテンツがあると思っています。

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ーそう伺うと、小説ってすごく不思議ですね。例えば、音楽だと、興味を持ったら楽器を買いに行く人がいたり教室に通う人がいたり、聞くだけではない楽しみがありますが、小説は読む一方で書こうと思いませんもんね。

田丸:まさにそうです。趣味人口が増えれば、波及効果もあるし、書き手になる人も増えますしね。なので、先ほど読み手を増やすことが目的だとは言いましたが、もっと書き手を増やすことも重要だと思っています。現状、日常的にいわゆる「小説を書く」ということに触れることってあんまりないですよね。

ー確かに、学校教育でも、音楽は実践的に演奏したり歌ったりしますが、国語って文法だとか読解だとか、実践を伴いませんよね。

田丸:それは、すごくもったいないことですよね。例えば、「読書感想文」のようなものも文章力を磨くためにそれはそれである程度は必要なことだと思っていますが、それだけではなく、もっと、「書きたい」という衝動に端を発して何かを書くという経験も同時に必要だと思います。誤字脱字をしようが、文法的に間違っていようが、何よりも衝動のままに書いてみる時間を確保する。そうすることで、結果的にもっと書籍を楽しむ人が増えると思うんですよね。

ー一度それに気がつくと、小説は、紙とペン、もしくはPCが一台あればそれでトライできる。とても気軽な趣味になりそうなのに、なんとなくもったいないように思いますね。

田丸:もっと音楽のように多様な楽しみ方ができたらいいですよね。カラオケに行くような気分で文章を楽しむようなことだって、きっとできると思うんです。

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空想はイノベーションの源泉だ。

ー「ショートショートの書き方講座」は、企業向けにカスタマイズしたワークショップの形でも開催していますよね。その狙いは?

田丸:主に2軸あります。ひとつは、広報部門を対象に、自社の商品やサービスを伝えてもらうこと。もうひとつは、研究開発部門を対象に、イノベーションメソッドとして提唱しています

ー実際に、どのようなメソッドなんですか?

田丸:ワークショップは2部性で、1部では荒唐無稽な物語を考えてもらいます。例えば「話をしてくるネジがあったとしたら」というような。2部ではそれをもとに、その物語を現実に応用するにはどうするのかを考えます。先ほどの例えですと「話ではなく、常にそれぞれのネジから、データが送られてくることはできないか」というような。荒唐無稽な物語から現実で使えるエッセンスを抜き出し、再構築するようなフローを取り入れています。

ービジネスシーンにおいても、発想力って求められているんですね。

田丸:少し前から、大手企業を中心に多くの新規事業部が立ち上がっていますね。ところが、何をしていいのか分からない…というタイミングで、僕のイノベーションメソッドを取り入れてくださるケースが多い。未来を創るのはいつも、個人による空想の力が大きいと思うんです。イーロン・マスク、スティーブ・ジョブズ…グローバルな企業の多くは個人の想像力が元になっているんじゃないかなと思います。ところが、「それって空想だよね。あり得ないよね?」とバッサリ切り捨ててしまう世の中が長らく続いてきたのかなと。

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ーそれこそ、先ほどの3.11以降、それが余計に進んだのかもしれませんね。

田丸:そうですね。まさに今コロナ禍で再び、震災の時のように生存本能側に還ることを懸念しています。社会全体が「空想」を、「物語」を取り戻せるのか、刹那的な実利を追うのか…揺れている状態なのかなと思うんです。非常に危うい世界ですね。ひとつ、希望としては、多くの組織が、中長期的に生き残るためには今この瞬間の実利だけではなく、必要ないと思われていた空想が必要なのだと気づき始めていることかなと思います。新規事業部を作ること…そのものが、刹那な実利だけでは立ち行かないという結果でもあるので。

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物語復興への厳しい道のりを淡々と。

ーAmazonでは社内でパワーポイントの使用が禁止されているようですね。図表や箇条書きではなく、なるべく文章を使う企業が増えてきていると聞きました。

田丸:文章にするという工程を挟むことで〈考える〉時間が増えます。脊髄反射的に視覚処理をして、直感的な理解で済ませていたところ、双方が考えることで一方通行なコミュニケーションじゃなくなるのかな。視覚的に訴えかけるのではなく、テキストで伝えることは、大きくいうと思いやり、多様性を育むことにもつながると考えています。

ー今って、例えばYouTubeでも「本のまとめ」とか、視覚聴覚でまとめるような流れが強いですよね。

田丸:テキストって行間から読み解けるものがたくさんありますよね。小説はもちろん、それがビジネス文書であっても。でも、誰かがまとめたものから情報を得ると、その時点で解釈や視点が1つに固定されてしまう。まとめた方の視点でしか物事を捉えられなくなる。それはすごく怖いことですよね。

ーそう考えると、物語の復興へ向けた道のりは、かなり険しいですね。

田丸:本当に、簡単なことではないと思います。社会全体として、慢性的に疲れている人…肉体だけでなく、精神が疲労している方が増えていて、それも本離れを加速させていることのひとつだろうなとも思います。小説は、脳内で文字から映像を再生します。能動的で、頭を使うんです。そこで脱落してしまう人がかなりいます。なぜなら、わざわざそんなことをしなくても、今はYouTubeや、ゲームアプリなど、気軽に楽しめるコンテンツが身近にたくさんあるからです。もちろん、そういったものも素晴らしい面はたくさんありますし、ぼく自身も利用していますが、それによって文章をベースにした物語から遠ざかってしまうということはあるのではないかと感じています。

ーそんな世界で、講座やワークショップを開いて頑張っていらっしゃる田丸さんですが。今後の課題は?

田丸:やはり、空想の力で世界を彩って行きたいので、とにかく空想することの楽しさが伝わる作品づくりや活動を続けて行きたいです。楽しさのタネを蒔き続けて、仲間を増やしたい。そのためには、地道にやり続けるしかありません。とっても地味ですが、それしかない。社会全体の枠組みから考える、新しい作家像を描けたらいいなと思います。作品を書くだけでなく、様々な活動を通じて社会に貢献して、明るい未来をつむぐ一助になる。それが、僕のチャレンジですね。

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ー田丸さんの作品は、「空想」…特に素敵で明るい内容が多いですが、社会のことから考えたり、差別を題材にしたり、今までの読者からしてもちょっと意外な側面もありますよね。

田丸:そうかもしれませんね。実は、ここ2~3年間で、未来をテーマとした話を依頼されることがとても増えているんです。未来を描けるのは、空想=物語ならではのチカラですよね。でもそういう未来を描く中で、自然と社会問題や社会のことと向き合わざるを得ないこともあります。これからは、「物語」を守るために、戦わないといけないこともあるのかもしれないですね。もちろん、楽しみながら(笑)。

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これからの世界で失いたくないもの。

ーでは、最後の質問です。田丸さんがこの先の世界で失いたくないものは?

田丸:それはやっぱり、〈空想する力〉ですね!個人でする空想でも、誰かと一緒にする空想でも良い。書き方講座の定期講座では、複数人でブレストをして物語をつくっていくんですが、アイデアが数限りなく出てきて、本当に楽しいし、毎回気づきもあります。

ー空想で繋がる。素敵ですね!

田丸:飲み会ではよく、そういう話、するじゃないですか(笑)。「このボタンを押すと、一瞬で火星と繋がったらいいよね」「そうだね、あははー!」…って。実は僕には、小さいころ、空想したことを人に何気なく言って「空気読めない」とか「天然」とか言われて、「あ、こういうことは人前で言ってはいけないんだな…」と、口にできなくなった過去があります。もちろん、TPOはわきまえる必要がありますが、空想の話をした途端に「変なヤツ」なんてレッテルを貼らずに、空想を思う存分楽しめる日常を希望しています。

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Less is More.

なんて、柔軟であたたかな戦いを続けているんだろう。それがインタビュー後の印象だった。書籍業界全体のこと、社会のこと、様々な方向への思いやりが田丸氏の活動からにじむ。私たちが、空想を、物語を取り戻すのはいまやちょっとした戦いなのかもしれない。

生存本能と理性の間で危うい世界に立って、自分自身のための物語を描くことこそ、今とても大事なことなのかもしれない。

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(おわり)


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