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日本は水に恵まれてはいない?ウォーターポジティブへ向かう世界の水問題。水ジャーナリスト 橋本淳司氏インタビュー。

「日本の水源が海外に買われている」「水道管がもうダメだ」そんなちょっと怖い話を耳にしたことがある方も多いと思う。こうした問題に10年以上も前からリポートし、世界中の水にまつわる問題を伝えてきてくれた水ジャーナリストの橋本淳司氏。
橋本氏に、現在の世界の水をめぐる状況と、日本の水問題について、幅広くお話をお聞きした。

橋本淳司:水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表。学習院大学卒業後、出版社勤務を経て、水ジャーナリストとして独立。国内外の水問題やその解決事例を調査し、メディア等で発信している。 アクアスフィア・水教育研究所を設立し、学校での探究的・協働的な学びの支援、環境インタープリターの育成を行う。現在、武蔵野大学工学部サステナビリティ学科客員教授(水とサステナビリティ、サステナビリティプロジェクト担当)、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プロジェクト研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事( 小規模で市民が維持管理できる水道の支援を行う団体)

世界中の水問題を伝えるジャーナリスト。

-橋本さんが「水ジャーナリスト」としてのキャリアを歩み始めたのはなぜですか?

橋本:20代中盤にバングラデシュの集落に水の調査に行ったことがきっかけです。その集落では10個の貯水タンクのうち7個に「×」印がついていたり赤く塗られていたりして、これはヒ素が含まれているため飲めないという意味でした。しかし、現地の人々はそのことを知りながらも、「この水しかない」といって、その水を飲まざるを得ない状況でした。

-それは大変な状況ですね。

橋本:日本の飲み水事情とのあまりの差に愕然としました。それで水に関する問題に気づき、何か行動を起こしたいと思ったんです。ただ、私には特別な技術がなかったので、まずは水の問題を抱える人々に会いに行くことから始めました。「水ジャーナリストになろう」と思ったわけではなく、結果的にそうなった、という感じですね。

-今日は水問題について広範にお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

橋本:どうぞよろしくお願いします。

「水」は地域性が強いローカルな資源。

-橋本さんの書籍には、世界中、様々な地域の水問題が描かれていますね。

橋本:水というのは非常に地域性が強い資源です。ですから、問題も地域によって全く異なります。例えば、気候変動に関しては「温室効果ガス削減」という共通の目標を掲げやすいですが、水については世界共通の課題を設定しにくいのです。

橋本氏の著作『水辺のワンダー ~世界を旅して未来を考えた~(文研出版)』。

-水問題は地域ごとの課題が多く、共通の問題として取り扱いにくいのですね。

橋本:はい。特に日本では自分の生活圏以外の水問題を「自分ごと」として捉えにくいと思います。水がなくなれば生きていけないことはわかっていても、自分の水がなくなることを現実的に心配している人は少ないです。一方、開発途上国では、日々の生活の3~5時間を水汲みに費やさなくてはならない地域もあります。つまり、日常生活そのものが水との戦いなんです。そのため、現地の人々は常に水に対する危機感を持っています。

-バングラデシュのような状況を知ると、不安な気持ちになります。

橋本:そうですね。決して他人事ではなく、生活用水に対する不安は生きている限り拭えません。また、旱魃や洪水などの自然災害に対する不安もあります。

-特に日本は、地震も多いですから、水問題は災害のイメージがあります。

橋本:水は「恵み」と「厄災」の両面を持っているのです。

世界中の流域を舞台に、水利権を巡る争いが起きている。

-著書には、世界では7億人、つまり約10%の人が安全な水を飲めない状況にあると書かれていました。

橋本:今後、その状況はますます厳しくなると考えられています。中期的には、世界人口の増加に伴い、生活用水や食糧生産用水、工業用水の需要も増えるでしょう。OECDは2050年まで2000年比で55%増加すると予測しています。水の供給量は有限であり、その頃の世界人口の4割以上にあたる39億人が深刻な水ストレスに直面するとしています。

-世界の4割!

橋本:えぇ。さらに、近年はAIなどのテクノロジー産業の発展に伴い、大量の水資源が必要となっています。特にデータセンターの冷却には膨大な水が使われますので、この傾向は止まりそうにありません。

-予測よりも悪くなるかもしれませんね。

橋本:気候変動が引き起こす環境危機は、世界中で深刻な影響を及ぼしています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、2010年から2019年の間に毎年約2150万人が気象災害によって住む場所を失い、移住を余儀なくされました。これには突発的な災害だけでなく、気候変動による食糧難や水不足といった複合的な要因も関係しています。水を失った地域では人々が新たな生活の場を求めて移動することが多く、これが新たな政情不安や社会的対立を引き起こすことがあります。他にも「流域」を舞台に「水戦争」「水紛争」の火種となりうる状況が、世界中で見られます。

-「流域」を舞台に?

橋本:流域を簡単に説明すると”山に降った雨が収斂して海に至るまでの地域”のことです。「水戦争」「水紛争」というのは、基本的に同じ川の流域で起きます。流域内の水の量は限られていますから、奪い合いが起きるんです。例えば、メコン川は中国領内からミャンマー、タイ、ラオスを流れてベトナムから海へと注いでいます。

-国家を跨いで河川が流れているんですね。日本とは、流域の規模が比べ物になりませんね。

橋本:その通りです。この広大なメコン川流域では、上流の中国がダムをたくさん作り、水量をコントロールしているのではないか?という疑惑が常に付き纏っています。実際にベトナムでは、水が枯れ、海水が逆流し、養殖魚がダメになったなんてニュースもあります。中国側はコントロールをしているわけでなく、メコン全体を考えていると言っていますが、真意はわかりません。紛争には至っていませんが火種にはなりうる状況です。

-確かにそうですね。

橋本:メコン川のようなケースは、国同士の紛争は構図としてわかりやすいですが、一国の中でも複雑な状況も生まれています。例えば、アメリカのコロラド川流域では、農業、テクノロジー産業、機械産業など、さまざまなセクターが水を奪い合っている状況です。国家間の奪い合いに加えてあらゆるステークホルダーが複雑にその利権をめぐって争っている。こうした状況は世界のあらゆる流域で起きていると思います。

水に恵まれていない日本。治水計画の現在。

-日本は島国なので国家を跨いだ流域もないし、争いも少ない。水にも恵まれているように思いますが、日本の状況はどうですか?

橋本:まず、「日本は水に恵まれている」というのは誤解なんですよ。旅番組なんかでも「水に恵まれた」というようなコピーはよく使われますが、現実は違います。

-え!!

橋本:確かに日本の降水量は世界平均の約2倍です。しかし、日本列島は細長く、中央の山脈から海までの距離が非常に短い。ですから、雨がたくさん降ってもすぐに海に流れ出てしまうんです。保水力がない、つまり貯めておくことができない地形なんです。それに加えて、面積の割に人口が多い。使える水の量を人口で割ると、一人あたりの水量は世界平均の半分程度しかありません。

-そ・・・そうなんですか!

橋本:また、特に都市部では地面のほとんどがコンクリートです。そのため、水を早く流すことに特化した治水政策を進めてきた結果、保水力はますます失われました。近年では、豪雨などの災害や気候変動の影響もあり、政府も柔軟な治水政策に転換を進めていますが、現状の日本は決して水資源が豊かとは言えない国なんです。

-柔軟な治水政策ってどういうことをやってるんですか?

橋本:2021年に「ダムや堤防に頼る治水は限界だ」と、政府が方向転換して「流域治水」をスタートさせました。流域治水は災害多発時代に向き合う新たな考えで、流域全体でハード対策、ソフト対策を行っていくというものです。流域内の田んぼや湿地で水を受け止めたり、住民も「自分の住んでいる土地」について防災の視点で再考するなどの意識改革が求められています。

-順調に進んでいるんですか?

橋本:国内の一級河川の流域については管理組織ができましたが、今はまだ河川の管理が中心の組織という印象は拭えません。今後は、流域全体の水資源や利水量をはじめとする環境全般をきちんと管理する必要があると思います。しっかり水をマネジメントすれば、食の自給自足やエネルギー問題の解決にもつながるかもしれませんし、水と触れ合って楽しむための施設も増えるかもしれません。

-あぁ。なんか水遊びできる公園とかプールなんかができたらいいですよね。

水道インフラ整備の失われた30年。

-治水政策にはポジティブな動きがありますが、日本の水道インフラ整備の問題について、橋本さんは20年近くご指摘されていますよね。現状はいかがですか?

橋本:現在でも本当にひどい状況ですね。特に水道管の老朽化は、随分前から問題になっているのですが、遅々として進んでいません。そもそも水道管を耐震性のあるものに変えると言い出したのは、それより以前、1995年阪神・淡路大震災の頃ですからね。

-約30年も停滞しているんですか。

橋本:2018年に水道法が改正されましたが、その背景には水道経営の悪化、上下水道設備の老朽化があります。都市部では少しずつ整備が進んでいますが、人口減少地域ほど財源の確保が難しい。

-過疎地の方が進んでいないのですね。

橋本:水道というのはシンプルにいうと設備産業です。水道事業に関わる浄水場や水道管などの設備費や人件費などを地域の人口で割って、皆さんの水道料金に反映されます。都市部は人口も多い分、一人一人の設備費の負担が比較的小さく抑えられる。ですから、少しずつ整備できますが、人口の少ない地域は一人あたりの設備の負担額が大きくなります。

-やはり水問題は地域ごとに全然違うんですね。

橋本:そのため、水道料金も地域ごとに大きく異なります。現在、一番安いのは地下水を利用している兵庫県赤穂市で20㎥(約お風呂100杯分)で月に853円ですが、一番高いのは北海道夕張市で6,841円です。

-約8倍も違うんですね!

橋本:この格差は2040年頃にもっと広がるのがほぼ確実です。現状の水道管を取り替えたりする設備費と人口推移からシミュレーションした報告(EY Japan、一般社団法人水の安全保障戦略機構)を見ると、一番安くなるのは、やはり地下水の豊富な静岡県の長泉町で1,266円。一方、一番高くなるのは、福島県鏡石町で25,837円になると されています。

-およそ20倍・・・・!

橋本:過疎地においては事業の持続すら難しいということでしょう。加えて、水道事業に携わる職員数(自治体および民間職員の合計、臨時職員、簡易水道を除く)は、2005年の64,707人から2019年の53,356人と11,351人減少(17.5%)しました。実はすごく悪手だったんです。人を減らすことで、点検したり修理したりする技術者が減り、技術の継承もされていない。そもそも技術者がいないという状況ですから、運営しているのが民であれ官であれ、なかなか状況は変わらないと思います。ある自治体では、水道事業の職員が最近まで1人しかおらず、トラブルが発生するたびに地元業者に電話をかけ、陣頭指揮を執っていました。その人物は「8年間、県外に出ていない」と語っていました。あまりに個人に頼りすぎています。

-どのような解決方法があるのでしょうか?

橋本:現在、自治体をベースに経営をされている地域が多いですが、もう少し大きな経営母体で考える必要があると思います。次に、水道をダウンサイジングする必要があると思いますね。

-ダウンサイジング?

橋本:現在は「大規模集中型」の水道システムといえます。大きな浄水場を作り、そこから網目のような水道管を通り、遠くの集落にも水を届けるシステムです。これは水道としては、一番効率的です。なんですが、一方で湧き水など、本来は水道がなくてもなんとかなった地域も水道で賄うようになってしまっていました。これからは、小規模分散で地域ごとに湧き水や地下水を利用したり、小さな濾過装置を作って住民で管理するなど地域特性に合わせた水の分配システムを考える必要があると思います。エネルギーのオフグリッドは話題になりますが、これはエネルギーに限った話ではなく、水でも同じではないかと。

-確かに水道に頼らなくても、色々なやり方はありそうですよね。

橋本:社会のベースとなることですので、もっと社会全体で支援策を模索していくべきだと思いますね。

日本の水源が海外に買われている?対策は?

-また2013年に出版された「日本の地下水が危ない(幻冬舎新書)」では、海外の人々に水源を買われていると警鐘を鳴らしていますね。

橋本:2000年代の後半に中国での仕事を手掛けていたのですが、現地の人から「日本って土地を買うと地下水も使えるんだって?」と聞いて調査を始めました。彼らは「日本は土地に関する法律がゆるいから、海外でも購入したい人は多いよ」って言っていました。実際に見せてもらったんですが、日本の土地がリストになったパンフレットが海外に出回っているような状況でしたね。

-そんなパンフレットまで作られていたんですね。

橋本:もちろん私も最初は懐疑的でしたが、調査を進めると実際に結構たくさんの土地が買われていることが分かりました。2010年に北海道議会から「水源地が海外に買われている。このままだと自分たちの水がなくなるのではないか」と文書として政府に提出されました。

-日本の土地のルールってそんなにゆるいものですか。

橋本:土地の取引は基本的に自由ですし、民法には「土地の所有権はその上下に及ぶ」と記されているわけです。実際には、海外の方もリゾート目的で購入した土地であっても、土地を買うとオプションとして水源までついてくるような状況でした。知らず知らずのうちに、水源が買われているわけですから、北海道議会が危機感を持ったのも非常によくわかりますね。

-買う側も売る側も、水源と意識せずに売買していたわけですね。

橋本:こうした状況は、2000年代後半から都市伝説的に語られるようになって、ある種海外に買われることに対するアレルギー反応があったわけです。ですが、2011年の東日本大震災をきっかけに、再び水源を含む日本の土地が買われ始めました。

-震災をきっかけに?

橋本:正確には、東日本大震災以降、再生可能エネルギーの普及を後押しする固定価格買い取り制度(FIT)が導入が契機だと思います。そこで海外資本が、土地を購入して太陽光パネルやメガソーラーを設置・運営しはじめたんです。不思議なことに、土地を買われるアレルギーがあったはずなのに、そこでなぜか「再エネ、すばらしい!」とウェルカムな雰囲気に反転したんですよね。

-なるほど。

橋本:そこからまた状況は変化し、現在は、農地がかなりの面積、買われています。耕作放棄地など、相続しても管理しきれない土地は、比較的ウェルカムな雰囲気で買われているようですね。海外企業だけでなく、何かあった時の避難地として購入する個人も多いようです。

-素朴に考えると、日本の水源が売られていくのは怖く思います。

橋本:「怖い」と感じるかどうかは、考え方にもよりますが、このまま進んだ場合のリスクについては考えておく必要がありますね。

-どのようにリスク対策すべきでしょうか。

橋本:やはり「流域」から考えるのが基本ではないでしょうか。流域というのは、そこに暮らす人々で限りある水を分け合うある種の運命共同体です。誰かが大量に使ったり、何らかの汚染をするのは流域全体の問題ですね。地下水利用の見える化を義務付けたり、流域ごとに水の循環をきちんと管理することが必要ではないかと思いますね。

-やはり流域ごとの管理が必要なんですね。

橋本:いざ問題が起きてから議論するのでは遅いと思っています。現状は、地下水や水源といった水問題に関心がある人は少ないですよね。そういう状態で問題が起きると「あいつが来たから水が枯れた」という排斥運動に発展してしまうことも考えられます。特に現在の世界情勢を鑑みても、想像にたやすいですよね。

-確かにそうですね。

橋本:そうした状況にならないよう、問題が大きくなる前にルール化する必要があると思います。海外の方が水の権利を持っていても、サステナブルな水利用ができる流域ごとのマネジメントをするために、前提としての水への興味や知識を皆さん共有すべきではないかと思いますね。

半導体企業で湧く熊本県の流域マネジメント。

-きちんと流域単位でマネジメントできている事例はあるのでしょうか?

橋本:例えば、熊本県は水に対する関心がかなり高い地域です。地元企業なども参加している熊本地下水財団を中心に、豊富な地下水のモニタリングも進んでいます。また、飲料メーカーなども涵養かんよう活動といって、水を浸透させる森林を保全したり、稲刈り後の田んぼに水をはって、地下水を増やす取り組みも実践し、国連から表彰されているんですよ。そうした下地があるからこそ、海外企業を迎え入れることが可能だったと思いますね。

-海外の半導体企業の進出が話題になりましたよね。

橋本:ただ、問題もあります。現在の企業の涵養活動は、あくまで自社の指標で行われていることです。さまざまな取り組みを統一の指標で行うのは、今後の課題だと思いますね。一番危険なのは、熊本の事例を見て安易な企業誘致をする地域が増えることです。水のマネジメントができていない地域にテック企業のデータセンターができたりすると、大変なことになると思います。

-確かにそれは怖いですね。

橋本:熊本は白川流域が一つの県に収まっているので、地の利もあります。流域が県を跨いでいたりすると、管理が複雑になることも考えられるので、安易には考えないようにしたいですね。

-熊本の事例は、流域マネジメントにきちんと取り組むことで、地域経済にも効果があることが良く分かりますね。

「ウォーター・ポジティブ」から見える水の未来。

-水問題、やはり不安になる話題も多いのですが、ポジティブなニュースもありますか?

橋本:色々ありますが、国際的な企業を中心に「ウォーター・ポジティブ」という運動が起きていることをご存知ですか?

-その名も「ウォーター・ポジティブ」!?

橋本:世界中の企業の水管理推進のために国連事務総長と国連グローバル コンパクト (UNGC) がパシフィック インスティテュートと提携して 2007 年に設立した「CEO ウォーター マンデート」という取り組みの中から生まれた運動です。簡単にいうと企業活動における淡水消費量以上の水を地域に還しましょうという活動なんですね。

-使った以上に水を還すなんてできるんですか?

橋本:えぇ。先ほどの熊本県の取り組みのように、流域の上流で森林保全をしたり、田んぼや湿原を増やすことで地下水を増やせます。または、そもそもの使用量を減らすために、例えば一つの工場内で水を循環させる技術も誕生しています。こういった取り組み全般がウォーターポジティブとして注目されています。

-素晴らしい取り組みですね。

橋本:こうした取り組みの中で企業側の意識も「どのように水の利用量を減らすのか?」ではなく「なぜ水を使うのか?」へと意識も変わってきています。
例えば、現在のデータセンターのほとんどは水冷式のシステムですが、冷却するために水を使わない冷媒にひたすような新技術も開発中です。普及にはまだ時間もかかりますが、ポジティブなニュースですよね。こういった取り組みは、ESG投資における一つの基準になっていくと思います。

-少し、明るい気持ちになりますね。

橋本:水問題は、決してネガティブなだけでなく楽しいことでもあります。身近な水に触れてみる、水辺を散歩してみる、自分の飲んでいる水がどこから来たか調べてみる。まずは、そういう些細なことから水を考えてみるのはいかがでしょうか。

-意識すると、日常のあちこちで水に触れていますからね。

橋本:人間が土地を持ったりすると、水は自分のものだと錯覚してしまいますが、本来は地球を循環し人間だけでなく動植物などあらゆる生命を支えるものです。水は本来、誰のものでもないからこそ、大事していけるといいと思います。

これからの世界で失いたくないもの。

-では、最後の質問です。橋本さんがこの先の世界で失いたくないものはなんですか?

橋本:そうですね。「土と水との触れ合い」を失いたくないと思います。
人類の歴史を辿ると、その時々で必要な場所やものに水を流してきました。例えば、自分たちの農地に水を引いたり、街に水を流したり、時に河川の流れまで変えながら、自分たちの都合に合わせて水を流してきたわけです。
今は、AIや半導体、データセンターなど仮想空間を構築するために水を引いている、流しているように感じています。人類は「水の流れを変えるサル」というのが私の持論です。そして過去の歴史を振り返ると、人類が大きく水の流れを変えるたびに、その副作用も起きているのです。

-あぁ。とてもユニークな考え方ですね。

橋本:仮想空間でのコミュニケーションが広がることは、いいことだと思います。でも、それを支えているのは現実の土と水だということは忘れないでいたいと思います。

Less is More.

橋本氏の指摘のように、身近すぎてその問題に気がついてもどこかしら他人事のようにも感じる「水問題」。
私たちが生きていくためには、まさに欠かせない水について、私たちはもう少し真摯に向き合う必要があるのかもしれません。

(おわり)

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