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経営学と管理会計から考えるこれからの組織デザイン。児玉麻衣子氏インタビュー。

今回は、良く耳にはするものの、どうも経営層以外には関係ないと思われてしまいがちな経営学について、明治大学大学院 経営学研究科 グローバルコース 特任講師/神奈川大学 工学部 経営工学科 非常勤講師の児玉麻衣子氏にお話いただいた。
児玉氏は、管理会計から企業のデザインを研究することでこれからの企業のあり方を考えている。「会社」「企業」に関わるすべての人に知って欲しい経営学のことをお届けする。

プロフィール/児玉麻衣子:神奈川県出身。明治大学大学院経営学研究科特任講師。神奈川大学工学部非常勤講師。博士(経営学)。専門は管理会計とマネジメントコントロール。著書に『Management Accounting for Healthcare』(分担執筆、World Scientific Publishing)、『Fixed Revenue Accounting』(分担執筆、World Scientific Publishing)など。

経営学ってどういう学問?

-「経営学」って実際に経営層や役員クラスしか学ばなくていいものってイメージがありますが、どう思われますか?

児玉:確かに「経営学」というと経営者だけが学ぶようなイメージがありますが、個人的には経営学ってそんなに敷居が高くないと思っています。多くの皆さんが企業で働いていますし、日常ととっても関わりのある学問なので、一部の人が学ぶわけでなく、もっと身近に感じていただきたいと考えています。

-さっそくですが、「経営学」ってどういう学問として捉えればよろしいですか?

児玉:捉え方っていうと、なかなか難しいですよね(笑)。経営学研究の根底には「企業経営の成果を高める源泉は何か」という問題意識があると思っています。例えば、経営の成果に寄与する戦略と、その戦略に影響を与える環境などの外部要因であったり、経営の成果に寄与する従業員のモチベーションはどのようなもので、それを高めるための施策とはどのようなものか、というように問題を設定していきます。こうした問題意識にもとづいて設定された疑問に対して、あらゆる手を使って答えていくことが経営学であると理解しています。あらゆる手というのは、心理学・社会学・経済学の理論をベースに使って、多くの企業や組織に当てはまる普遍的な因果関係やメカニズムを解明することと言えると思います。個人的には、経営学の理論は企業や組織を運営していくにあたって現状を把握するためのベンチマーク的なものと捉えるといいのではないかと考えています。

-心理学もベースになっているんですね!

児玉:組織経営って突き詰めると組織で働く人の行動や意思決定の集積ですからね。心理学の理論を援用した研究も数多くなされています。

-MBAなど資格的なものもありますし、既に学問としてのフレームワークが確立しているんですか?

児玉:MBAの教科書などで見るような、ポーターのファイブフォース分析といった経営分析のフレームワークは、1980年代や1990年代に作られたものが多くて、最新の研究で示されている理論が反映されていない…アップデートされていないんですよね。こうしたフレームワークが実質的に役に立つかどうかについては賛否両論あると思います。

-なるほど。実際に企業に勤めていたり、経営をしていると現実と理論が乖離しているような気もしますよね。

児玉:それはもちろんあると思います。特に、実際に経営をされていらっしゃれば、経営の現実と理論が乖離しているように感じられるのも仕方ないと思います。一方で、企業で起きる問題…例えば「ある企業において退職率が高いのはなぜか?」といった現実的な問題が起きたときに、経営学の理論を参考に問題解決を考えることはできると思います。従業員の退職率と企業の施策・職場環境・従業員の個人的な要因がどのように関連しているかを理論的に考察して、実証的に明らかにしている研究がたくさんあって、このような研究から退職率を高める要因にはどのようなものがあって、それを抑制するためにどうすればいいかというヒントが得られるはずだと考えています。

-問題解決のための一つの指針として有益なのかもしれませんね。

児玉:はい。先ほど、経営学の理論はベンチマークとして使えるという話をしましたが、経営学は、経営現象を抽象化して、理論化することに意味があると思います。なので、一個の企業の事例を取り上げて、なぜこの企業は上手くいってるのかを調べるだけでは、経営学とは厳密には言えないんですよね。ある現象を理論化することは、ある企業とか職場みたいに特定の文脈に深く根差した知識を、より一般的に利用できる知識に昇華することを指します。なので、実際的な問題の改善に向けたフィードバックとして機能するシーンもあると思いますね。もう一つ、経営学とひとくちに言っても、領域が多岐にわたっていますが、会計やファイナンスみたいな分野は、実務でも使えるスキルがイメージしやすいですよね。会計は簿記とか公認会計士の資格をとれば、企業の決算書を読み解くスキルに直結しますし、ファイナンスの知識を身につければ企業価値の評価を行うことができる。でも、それ以外の経営戦略とかマーケティングの知識はすぐに役立つイメージを持ちづらいかと思います。特に、大学生が学部で学ぶことに意味があるのか?って思われるかもしれません。でも、論文を読む中で問題を発見して、仮説を立てて検証するサイクルを回して、論理的な思考力を培うためには、すごく役立つと思います。学問全体が、そういうサイクルを学ぶためのものですが、経営学は会社や組織と緊密に関わっている学問ですから、学生の場合でもアルバイトやスポーツのチームの運営みたいに、日常的な仕事や経験と直接的に結び付けて考えやすいのかなと思います。

最近の潮流について。

-近年の経営学がどのような研究手法が多いのですか?

児玉:定量分析を重視する傾向はありますね。早稲田大学・入山先生の「世界標準の経営学」という書籍でも、アメリカを中心とした世界の経営学の潮流は、定量分析に傾倒していると記されていました。

-数値やデータを分析する手法が多いんですね。

児玉:定量分析を使って理論を検証するような研究は、科学としての厳密性と、これまでの常識や思い込みを覆すような知的面白さが追求されていて、実際の企業経営に役立つことにはあまり力点が置かれづらいと言われていますね。

-確かに、数値だけでは見えてこないものも多そうですよね。

児玉:どうしても、企業をマクロの視点で捉えることになるので、具体的な経営の現場での状況を捨象してしまうことになりますね。

-潮流みたいなものはあるんですか?

児玉:戦略論・マーケティング論・経営組織論・会計・ファイナンスなど分野が多岐にわたっているので、なかなか経営学全体で把握するのは難しいですね。でも、例えば、新型コロナウィルスによるパンデミック以前の2000年代からすでに世界の経営学研究では、テレワークを導入することの効果が検証されていたりしていて、ニューノーマル時代に企業がどのように成果をあげていけるかを考えるようなテーマの研究は増えているように思います。

パンデミック以降の経営学の潮流。

-パンデミックで、色々と変化したんでしょうか?

児玉:グローバル化の進展や企業間の競争が激化している「不確実な世の中」における企業経営の在り方をテーマとしたものは以前からありましたが、それに加えて、パンデミックという危機的な状況が組織や個人に与える影響を明らかにしようとする研究は確実に増えたと思いますね。
書店でも「パーパス経営」というような書籍を目にされることも多いと思いますが、危機的な状況において多くの企業がこれまでのビジネスのやり方を変える必要に迫られる中で、パーパス・ヴィジョン・ミッションといった組織の本質的な概念から見つめ直し、新しい方向に向けてもう一度企業をまとめなければいけないと主張するような本が増えているような印象です。

-ヴィジョンやミッションってやっぱり企業にとって大切なんですか?

児玉:ヴィジョン・ミッションはすごく重要です。組織を、働く人たちが「我々」という共同体意識を持ったものとして運営するためには、大切ですよね。組織って基本的には個人の集合体ですから、このような理念がないもとで人を集めても、放っておくと烏合の衆になってしまいます。ただ、だからといって同じ理念を盲目的に信じるような同質的な集団になってしまっても良くない。

-実際にそういうヴィジョンとかミッションが活かされていない企業も多いように感じます。

児玉:多分、それは落とし込み方が悪いのかと思います。それぞれの人が持っている強みや資質が、あるヴィジョンやミッションのうちに通底している、というのが理想だと考えています。逆に言えば、従業員に求められるのは、ヴィジョンをただ理解することというよりも、そのヴィジョンから導かれるミッションに対して、個人がどのように貢献できるのかを考えて、状況に応じて柔軟に動けるようにすることなんじゃないかなと思いますね。共通のヴィジョンとミッションのもとでの、組織の一個人としての自らの貢献を知り、他者の貢献を尊重して、ひいては他者を信頼することで、共同体感覚が形成されるような気がしています。

日本ならではの経営学?

-経営学って、各国ごとに特徴があったりするんですか?

児玉:欧米を中心として、定量的な研究を積み重ねることで世界的に標準的な理論を作ろうという流れがあると言われています。ですが、日本の研究は、一つの企業を対象とした事例研究をすることが多い…といった特徴はあるように思いますね。日本だけではないかもしれませんが、世界とのトレンドとの乖離はあると言われていますね。

-そうなんですね。

児玉:国際的な学会に日本の研究者があまり参加していないというのは先ほど挙げた入山先生の著書で指摘されていますね。少し話がズレますけど、慶応義塾大学・岩尾俊平先生の「日本“式”経営の逆襲」という書籍では、両利き経営やリーン、アジャイル、ティールといった近年のビジネス界隈で耳にするコンセプトが生まれるに至るまでの初期の段階で、実は日本企業の経営実践が一部参考にされていると書かれています。日本企業の競争優位性を支えてきた「カイゼン」のコンセプトでさえも、今ではアメリカ発のものだと見なされてきているそうです。なので、日本の経営の技術は十分世界に打って出られるようなものであるのに、コンセプト化についてはアメリカが強いために、日本発のものとして発信するのに遅れを取ってしまっているそうです。

-あぁ。なるほど。

児玉:日本企業って一時期「カイゼン」で世界を席巻しましたよね。でもこのカイゼンという手法、アメリカやヨーロッパで導入した企業では、改善提案件数や生産性の向上に寄与しなかった例が報告されています。最近の研究では、神経科学の知見を取り入れて、日本人のセロトニントランスポーター遺伝子を調べて、「不安になりやすい」という日本人の気質こそが、カイゼンの原動力となっている可能性が示されています。もしかしたら、今は各国ごとの特徴が出ている経営理論が、こういった自然科学の知見を取り入れて発展していく可能性があるのかなって考えています。

管理会計から組織をデザインする。

-児玉さんはどういった研究を専門とされているんですか?

児玉:私自身は、管理会計・マネジメントコントロールを専門として「経営の自己組織化現象」について研究しています。

-「自己組織化現象」?

児玉:例えば、人間の身体には60兆個の細胞がありますが、血管の一部が破損したときには、血管の近くの細胞は自律的に相互作用を起こして、血管の一部に置き換わっていきます。司令塔みたいな存在がいるわけじゃなくて、個々の細胞が、自分がどこにいるのかの位置情報を受け取って、それをベースに自らの役割を決めているそうです。経営における自己組織化というのは、「組織で不確実な問題が起こった時に、組織で働く人々が自律的に動いて、相互作用しあう中で、自ずと新しい秩序が生まれる」ような状況を指します。近年よく聞く、ティール型(「組織を一つの生命体」と捉える論)組織のような構造がフラットで一人一人の従業員が完全に自律的な組織ということではなく、構造がいわゆる中央集権型の組織の環境適応に興味を持っています。実際に同じような組織構造であっても、現場が自律して環境の不確実性に適応ができている企業とできていない企業があるんですよ。

-そういった研究を管理会計から研究されているんですね。

児玉:そうなんです。自律的な組織に適合する管理会計システムやマネジメントコントロールシステムがどのようなものであるべきかを研究しています。特に、日本的な経営の強みとして、ボトムアップが重視されていて、現場における知識や経験を尊重した全員参加型の経営を実践している企業が多いと思うのですが、そこから何かヒントが得られないかな、と考えています。

-管理会計はどういうものなんですか?

児玉:管理会計というのは、全社の目標を財務的、非財務的数値に落とし込んで、それを組織の末端にまでブレークダウンすることで、数字を軸に組織を一体化させる経営戦略実行の方法論と言うことができます。まずは、管理会計って財務会計とは全然違うというのを理解して欲しいです。財務会計というのは、組織の外部のステークホルダーである投資家・金融機関に対して、組織の経営成績を報告するためのものです。そのために、貸借対照表ですとかバランスシートなどの報告書が作成され、その数値には正確性が求められます。一方で、管理会計は、ざっくり言うと経営者・マネージャーが経営を管理するためのものです。具体的には、予算管理システムが代表的なシステムになります。管理会計システムには、経営者・マネージャーが意思決定をするときに有用な情報を提供する情報システムとしての役割と、部下の心理や行動に影響を与えるための影響システム、この2つの役割があります。この2つの役割のバランスを考えて管理会計システムは設計され運用される必要があるのですが、特に、影響システムとしての役割は、重要であるのにも関わらず、見過ごされがちなところがあります。

-なるほど。

児玉:なぜ、影響システムとしての役割を考えないといけないかと言うと、人間の本質として、測定され評価されると行動を変えてしまうことがあります。人は、自分の行動が測られていることが分かると、結果を良くしようとします。結果が、昇進につながったり、ボーナスに反映されたりすると分かっていれば、なおさらですよね。

-あぁ。業績をよくみせるために不正に走るみたいなものですね(笑)。

児玉:はい(笑)。つまり、当初は意図しなかったような結果をもたらしてしまうんですよね。どのように成果を測るかが、組織の人々の心理や行動にダイレクトに影響を与えるので、それを逆手にとって、どのようにすれば人々が集団として自発的に相互作用をして協力し合うことができるかというメカニズムを紐解くことが、自律的組織を作るうえでの重要なのではないかと考えています。

-ざっくりいうと、数値を使って組織をアップデートするみたいなことですね。

児玉:管理会計って心理学との接続こそが重要なんだと思うんですよね。よく言われますが、内発的な動機づけを引き出すのに金銭的な報酬は有効じゃないと考えられています。一時的に生産性が上がったとしても、持続しないケースも多い。企業側も金銭的な報酬だけに頼らずに、非金銭的な報酬もバランスよく使ったり、心理学な知見も取り入れてきちんとデザインするといいと思いますね。

「誰にでもできる仕事をなくす」新しい組織のデザイン。

-実際にどのような組織デザインが考えられますか?

児玉:「誰にでもできる仕事をなくす」っていうのが重要なんじゃないかと思いますね。誰でもできる仕事に対してのインセンティブって、内発的動機に繋がりにくいケースが多いと思うんです。組織って、どんなによく設計されていたとしても、どこかしらに創意工夫の余地がある。その創意工夫に対して報酬が紐づくといいと思うんです。誰でもできる仕事ではなく、個人でしかできないような、個人の持つ資質や個性が活きる仕事を創ること重要だと考えています。

-誰でもできる仕事だ…と思うと、なかなかモチベーション湧きませんもんね。

児玉:そうですよね。株式会社ワークマンはすごく面白いですよね。KPI達成以外は何もしないという「しない経営」を軸にしつつ、店舗運営のための情報を自由に分析できるように、すべての社員がエクセルを使ったデータ分析ができるように教育する「エクセル経営」をしています。

-へー!

児玉:客層ごとの売れ筋の分析や在庫管理なども含めて、社員全員がデータ分析を使いこなすことで、それをきっかけとして個々の従業員が建設的な議論ができるようになって、業務の改善ができるようになると言うことです。よく「現場の力を活かすためにエンパワメントすることが大事だ」って言われますが、実際にただ単に権限を委譲したところで、業務の丸投げになってしまったり、あるいは現場が自分に都合よく好き勝手に動いてしまったりと、なかなかうまくいってなかったりしますよね。

-確かに「任せる」っていってもなかなかちゃんと任せられていないケースが多いように思います。

児玉:その権限委譲の一つの形として、ワークマンの事例は興味深いです。ある意味では、こういった経営にまつわる数値などを開示して、それらを活用できるように社員を教育することで、自然と権限委譲のための土壌を作っていると言えるかもしれません。

-実は数値を元に色々考えた方がいいのかもしれませんね。

児玉:現場に自律的に考えて行動してもらうということは、業務上の非効率や問題をまずは突き止めてもらうところから始めないといけないですよね。そのためにも、そういった数値的な客観的な指標がないと、カンや経験だけで判断することになって、的外れな改善施策を取ってしまう可能性がある。そういうのは、あまり望ましくないと思うんです。

-確かにそうですね。そういった管理会計のようなデータから、現場の業務の解像度を高めるのは面白いですね。

児玉:京セラのアメーバ経営みたいに、現場レベルで従業員が売上の増加やコスト削減を考えるシステムを取り入れてる会社はありますが、管理会計情報を本格的に現場と共有して、現場レベルで管理するような会社はあまり聞きません。システムを運用する際のコストベネフィットの問題があるのだろうと思います。
でも、そこまでいかなくても、キャッシュフローや、損益計算書、在庫情報などの数値データを、考えるための情報として社員に開示して、そこから、従業員が自分たちで業務を良くするための仮説を立てて、それを検証していくことができるような仕組みがあれば、より仕事に対する当事者意識を持ってもらったり、仕事の意義を理解してもらうことにもつながっていくんじゃないかなと思います。

-それほどの透明性がある企業は、すごく魅力的にも思えるかもしれません。

児玉:なかなか難しいですが、研究する上でも企業には管理会計情報を少しでも開示いただけると嬉しいなと思います(笑)。会計リテラシー・データリテラシーを高める教育についても、これからの日本で労働人口が減少することを考えると、生産性を上げるためにも従業員にしっかり投資するという意味で重要なんじゃないかと考えています。

-そうですね。会計データを見る上でのポイントはありますか?

児玉:管理会計情報をあつかう上で大事なポイントとして、一橋大学の伊丹敬之先生が言っているように、会計データを、単に金額や数字という無機質なものじゃなくて、現場の人たちの感情や行動が集約されているものだと見ることにあると思っています。つまり、現場で働く人たちの心理を想像して、その行動を望ましい方向へと導けるような目標を設定して管理することですね。あと、経営層と現場をつなぐ架け橋として、管理会計士が現場をどのようにサポートするべきかという研究も立ち上がっているので、その辺りの研究には今後着目していきたいです。

-そもそも、児玉さんはなぜ経営学を志したんですか?

児玉:最初から経営学をやろうと強く思っていたわけではなかったんです。私は、10代で出産していて大学入学前時点で子供がいたんですね。なので、会社ってどんなところで、どうしたら子育てをしながら働き続けることができるのだろうかを考えようと思って経営学を選んだ覚えがあります。当時は、日本の企業風土として、新卒を一括採用して、横並びで社内教育してくのが一般的だろうというイメージがあったので、卒業後に子供を育てながら会社で周りの同期と同じようなペースで働くのはきっと難しいんじゃないかという思いがありました。それで、管理会計から学び始めたんです。

-スタートが管理会計だったんですね。

児玉:会計の資格を持っていれば、専門職に就けますし、就職の時にある程度潰しがきくかなって思いまして(笑)。でも、大学・大学院と学ぶうちに研究に面白さを見出すようになって、研究者を目指すようになったんです。院生だった時の指導教授からは「実務に役立つような研究をしなさい」と常々言われてきたので、実務にも何か有用なフィードバックしていくことができるような研究をするのが目標です。経営学の視点から、企業活動と皆さんの日常をより良くしていけたらいいなと思います。

これからの世界で失いたくないもの。

-では、最後の質問です。児玉さんがこの先の世界で失いたくないものはなんですか?

児玉:「遊び」ですね。子どもを見ていたり、動物を見ていたりすると、遊ぶ中で学んでいるなと感じます。子どもの頃は遊んでいるうちにいつの間にか何時間も経っていたというような、没頭する時間ってありましたよね。大人になると、本来であれば子供の頃よりも遊ぶための選択肢は増えているはずなのに、そういう時間を持ちづらくなるのが寂しいなって。遊びの中で何かの学びに没頭するような経験は、これからも失いたくないと思っています。

Less is More.

堅苦しい印象すらある経営学、児玉氏のお話をお聞きすると私たちすべての人の日常に非常に関わりのある学問だと改めて理解できた。
経営を多くの人が学ぶことで、日常的な業務の解像度が増し、透明性を持てればより良い社会に迎えるのではないかと感じた。

(おわり)

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