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「この仕事が、世界を変えるんだ。」石坂産業の姿勢から学ぶ見学リポート。(工場編)

Less is More.by info Mart Corporation

日本企業として初めてAmazonが主導する「気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)」に署名した石坂産業株式会社をご存じだろうか?

石坂産業が手がけるのは「産業廃棄物中間処理」。1999年にダイオキシン問題の風評被害で地元から反対運動が起きたところから一転、現在ではSDGsに取り組む最先端企業としてグローバルでも注目を集めている。

今では、持ち込まれた産業廃棄物を”焼却”するのではなく、徹底的に”分別分級”することで減量化・再資源化率、なんと98%を誇り、里山保全の一環としてサステナブルフィールド「三富今昔村」を運営している。
持続可能な社会の実現に向けて「Zero Waste Design」をビジョンに掲げ、SDGsを自ら考え、実践し続けてきた石坂産業の姿勢に、私たちが今学ぶべきことが数多くある。

埼玉所沢郊外の企業が、世界から期待を集めるその理由について、工場・里山見学を通してお届けする。今回は前編を工場見学編、後編を里山見学編として全2回、ぜひ楽しんでいただきたい。

SDGsにどのように向き合うのか悩んでいる企業のビジネスパーソンは、ぜひご一読いただければ幸いだ。

(左から)今回案内してくれた石坂産業株式会社 清水さん・友國さん。

工場見学の前に、なぜ工場見学を受け入れているのか。

-今日はよろしくお願いします。見学の前にそもそも石坂産業さんの事業構造を簡単に教えてください。

清水:家屋解体やリフォーム、ビルの建て直し、道路工事の際に出る廃材など建設系の産業廃棄物処理を中心に受け入れ、減量化・再資源化する総合リサイクルプラントです。

-リサイクル率がすごく高いですよね。

清水:減量化・リサイクル化率が98%です。これは、業界の平均と比較しても高い数字です。

-石坂産業さんの特徴でもある、環境保全やリサイクルに力を入れ始めたきっかけを教えてください。

友國:1999年に、ダイオキシン問題の風評被害で地元から「石坂産業は出て行け!」という反対運動が起きました。風評被害とはいえ訴訟にまで発展したのです。

-それは、ひどいですね。

友國:そんな最悪のタイミングで現代表・石坂典子が創業者から事業を引き継ぎ、私たちの事業は大きく舵を切ることになります。まずは全天候型のプラントを導入することからはじまりました。周囲に廃棄物の埃などが飛散しないようにしながら、従業員が雨風にさらされない環境を作りました。

-なるほど!ですが、それほどダイナミックに会社を変えるのは非常に大変なことですよね。

清水:石坂典子社長の「働く人のことや地域の方の負担を改善したい」という強い思いがあったんです。当時は離職者も次々に出て、社内からも非難の声が上がったそうです。

-すごく大変な思いもされたんですね。

清水:全天候型のプラントを導入して、見学通路を建設してから工場見学に最初にご招待したのは、反対運動をされていた皆様でした。まずは、きちんと地域の皆様から信頼を得ることから始まったんです。それ以来、工場見学の受け入れがスタートして現在に至ります。

友國:工場見学だけでも年間約1万人、保全している里山を楽しみに来てくださる方が年間約5万人もいらっしゃるんですよ。

-今日はまず工場見学からスタートして、里山も見学させていただけるとのことで楽しみにしております。

清水:では、まずは工場見学に参りましょう。

加工場-自分達の道具を自分達で使いやすいように。


清水:最初に見ていただきたいのは「加工場」といいまして、様々な重機や道具を自分達で修理したり、使いやすくカスタマイズしたりする場所です。新しく重機を買うだけでなく、自分達の道具をきちんと自分達でメンテナンスするようにしています。

-すごく綺麗に整頓されていますね。

清水:毎日のようにさまざまな方が工場見学にいらっしゃるので、社員みんなが工場をできる限り整頓していつ見られてもいいようにしています。

こちらは全天候型工場の周囲を囲う「緑化壁」。

清水:これが、工場の外壁です。1999年にダイオキシン問題の風評被害が起きた際に、まずは地域の皆様に愛されるように工場全体を防音壁で囲いました。今では、植物による防音効果と、CO2の排出抑制のため、壁面緑化を導入しています

-グリーンも増えるし防音にもなるので、素晴らしいですね。

清水:では、中に参りましょう。

廃コンクリートプラント-環境への配慮が当たり前にされている。


清水:
ここでは、重機で鉄筋とコンクリートを分別して、ふるいにかけてサイズごとに処理しています。ぜひ、注目していただきたいのが、日立建機さんと共同開発した電気で動く重機です。

-すごい!電気で動くとどういいんですか?

清水:一つはCO2削減につながります。もう一つ、建物で覆った全天候型の工場内で、軽油を使うと粉塵との関係で排ガスが出てしまうんですね。電動にすることで、排ガスも出ないので従業員の職場環境にも貢献しています。

重機の中央から天井に向かってのびるコードで給電している。そして、天井にも仕掛けが…。

清水:この天井にも注目です。実は私たちの工場は極力電気を使わないようにしています。天井の採光窓から入る自然光で作業をしているんです。

-ものすごく徹底して環境への配慮をされていますね。

次のプラントに向かう道は工場見学に来た企業や子供、そして従業員のメッセージがびっしりと書かれた「グリーンアクションストリート」。

土砂系混合ゴミ処理プラント-誰もやりたがらない処理を手掛けること。

清水:ここが石坂産業の主力プラントです。

-どんな作業をされているんですか?

清水:家を解体するところを想像していただきたいのですが、まずは屋根を取って、壁を取って、柱を取ってと、順番に解体していきますよね。

-はい。

清水:そこまでは、解体現場で分別してお持ちいただけます。そういう分別できるゴミを除いていって、最後に残った様々なごみ紙屑ですとか色々なものが混じったゴミを当社では「土砂系混合廃棄物」と呼んでいます。
こういった土砂系混合廃棄物は、分けることが難しく、最も処理しにくいと言われています。

-確かにパッと見ても、先ほどの廃コンクリートに比べるとごちゃごちゃしたゴミですね。

清水:だからこそ、私たちはこの土砂系混合廃棄物の分別・分級に特に力を入れています。

-分別も大変ですし、一番やりたくない処理なのに素晴らしいですね。

「土砂系混合」は写真のようにさまざまな素材が入り混じったゴミだ。

清水:こちらのゴミの4~5割は、実は同業者様からのご依頼で持ち込んでいただいています。産業廃棄物処理業界では、廃棄物の80%くらいがリサイクルされると言われています。リサイクル技術を独自に開発しようと思うと、開発費用もかかります。その残りの20%をここにお持ちいただくことで、リサイクル率を高めるんです。

-石坂産業さんはこういった土砂系混合廃棄物をリサイクルする独自の技術があるんですね。実際に土砂系混合廃棄物は、どのように分別していくんですか?

清水:まずは、ふるいにかけていきます。

約45秒に1立米(1㎥)の量を適切に流し込むことで、詰まることなくスムーズにふるいにかけることができる。

清水:ゴミの水分量によって詰まってしまわないように、熟練の社員が時間と投入量をコントロールして入れていくんですよ。

-皆さんのスキルの高さあっての技術力の高さなんですね。

作業中にも関わらず、全ての皆さんがあたたかく見学を迎えてくれた。
ふるいにかけられた後は、大きなゴミと小さなゴミに分級され、ラインに流れてゆく。ラインの途中に磁石で鉄を分別したり、風を当てて細かく分別をする。

なぜ、これほどまでにオープンなのか?

とても柔らかいトーンで、丁寧に説明してくれた清水さん。独自の作業工程は全てパネルとして公開してあった。

清水:こちらで、私たちの作業工程を公開しています。

-素朴な疑問なんですが、こういう独自の工程とかって秘密にしたりするものではないんですか?

友國:私たちは、そういった分別のフローも隠さずに公開してます。私たちの工場を参考にしていただくことで、結果的に世界中からゴミがなくなるのはすごくいいことですからね。

-素晴らしい姿勢ですね…。

友國:工程自体は真似されたとしても、一つ一つの作業に私たち独自の試行錯誤があります。例えば、色々試した末に、お米の選別器を使ってゴミを分別したりもしていますし、重機を使いやすいようにしたり、もちろん働くみんなのスキルにも支えられています。工程だけを真似されたとしても、うまくいくものではないんですよ。

-一人一人のクリエイティビティみたいなものが大事なんですね。

とても淡々と詳しいお話をしてくれる友國さん。

人とロボット。どちらのチカラも必要。

清水:ここでは、AIで素材を判別するロボットと人で同時に廃棄物の選別をしています。

-あぁこうしてロボットと人が働いている姿は、なんだか感動しますね。

友國:どこまで行っても手作業というのは、まだまだこの業界では避けて通れません。

人が選別するラインの後ろにはロボットが選別するラインもある。
電池などが混入していると、とても危険で、火柱が上がってしまうそう。実際に選別作業をされている現場を見ると、普段自分の出しているゴミの分別の甘さを再認識させられる。

清水:では、最後にチッププラント、木材の処理をするプラントに参りましょう。

チッププラントに行く途中の道は、瓦を細かく砕いて砂利道にしていた。キラキラと光るのは瓦の表面。

チッププラント-状態によって細やかなリサイクルを。

清水:ここでは、木材の状態によって細かく破砕することで、牛さんの寝床にしたり、バイオマスの原料にしたり、段ボール原料にしたりと6種類にリサイクルします。

木材の状態によって、リサイクルの仕方が変わる。

-それにしても、中はすごい音ですね。

清水:この防音壁の内側と外側で全然違いますよね。チッププラントは破砕する際の音がすごいので、特別な防音壁で近隣の迷惑にならないようにしています。

周囲をきちんと防音壁が覆っている。壁の外は驚くほど静か。
木材に打ち込まれていた金属も丁寧に取り除かれていた。
ちょうど重機を調整していた。自分達の道具を自分達で使いやすいように愛情を持って接しているようだった。

工場見学をきっかけに「Zero Waste Design」の実現へ。

-工場見学、ありがとうございました。産業廃棄物の分別作業などを拝見すると、自分が普段出しているゴミについても色々と思うところありました。

清水:私たちは「Zero Waste Design(ごみをごみにしない社会をデザインする)」という目標を掲げています。私たちは廃棄物を「資源」として捉えているんです。廃棄することなく、適切に処理することで、もう一度使える「素材」へ戻していくのが私たちの役割です。

-98%ものリサイクルは、本当にすごいことだと思います。

清水:ただ、私たちがやれることには、限度がありまして、なんでも素材に戻せるわけではありません。どんどん処理のしにくいものも増えてきています。色々な素材が組み合わさって、分別して素材に戻しにくいものが近年多いんです。

-これほどSDGsなどが叫ばれている状況なのに…。

清水:SDGs の12番目「つくる責任 つかう責任」ってありますよね。私たちは、それに加えて「捨てる責任」があるのではないかと考えています。作るところから、捨てる時のことを考えていただくと、廃棄物は、資源として社会に循環し続けると思うんですね。そういった色々なものを作る皆さんと一緒に現状を変えていければ、すごく嬉しいです。工場見学が一つのきっかけになるといいなと思います。

友國:弊社の石坂典子社長が「住宅展示場に行くと、私には未来のゴミの山に見える」と話していたのが印象的でした。私たちには現在建てられている家が、30~50年後に産廃になる未来が見えているということです。とても複雑で処理しにくそうな素材やモノが今増えていることにすごく危機感を感じています。こういったことを現在から考えておかないと、大変な問題になると思っています。

-また、私たちの時代で次の世代が解決しないといけない課題を作り出しているのかと思うと、心が痛みます。

友國:企業の枠を超えてバリューチェーン全体で考えるべき責任ですよね。バリューチェーン全体で、捨てた後に素材に戻す循環を作らないといけないと思います。こういったところも私たちが掲げる「Zero Waste Design」の中に内包された考え方なんです。

-そういった理念ですとか、そういうのも、この圧倒的な現場を拝見すると、ものすごく腑に落ちるものがあります。

友國:現実を見るというのは、すごく大事ですよね。産業廃棄物処理の現場に来ていただけることで、「捨てることも考えていかないと」と思っていただけることもすごく多いんです。私たちが「ぜひどなたでも工場を見学に来てください」と言っているのも、こうした現実を見ていただきたいからです。この現実を見ずに、お話をさせていただいても、空想の話をしているようにしか聞こえないかもしれませんから。

-確かに言葉だけですときれいごとに聞こえるかもしれませんが、こうして現実と共に語られるとものすごい説得力があります。

友國:現実を見ていただいて、こうして議論を交わしたりすることにはすごく意義があると思っています。みんなで知恵を絞って、「Zero Waste Design」を達成していければと思います。

清水:工場は、石坂産業の敷地の2割なんです。ではでは、後半は石坂産業が保全に力を入れている里山見学に参りましょう。

里山の入り口から見た工場。広大な里山と工場が同敷地内で自然と両立している。

Less is More.

テキストと写真でどこまで伝わっただろうか。実際に工場に行ってみると、そこで働く皆さんの真摯な想いが胸を打つ。

今回のタイトルにもさせていただいている「この仕事が、世界を変えるんだ。」これは、石坂産業の社員が日々の仕事の中で自然と口にした言葉だそうだ。これほど真っ当に自分達の仕事に胸を張れる企業がどれだけあるだろうか。

後半は、東京ドーム4.6個分の総敷地面積のうち8割を占める里山見学ツアーの様子をお届けする。

(つづく)


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