私たちが、愚かさを正しく楽しむために。真実を語る黒子氏インタビュー。
YouTubeチャンネル「真実を語る黒子」をご存知だろうか?失礼ながら、怪しさ満載の出立ちながら、圧倒的な知識量で民俗学・宗教学・文化・俗信・俗習・神話に加えて、怪談や都市伝説といった広範なジャンルを取り上げている。
「知識は「外れないメガネ」誰からも奪われない宝物」と語る、謎に包まれたYouTuber「真実を語る黒子」氏に、学びの大切さについて、お話をお聞きした。
-YouTubeチャンネル開設から2年とちょっとで、登録者数も好調に伸びてらっしゃいますね。
黒子:ありがたいことに、2023年8月現在は、8.65万人の皆様にご登録いただいています。
-比較的マニアックな世界を取り上げています。その圧倒的な知識はどのように身につけたのですか?
黒子:大それたことは言えませんが、好きなものを、好きな時に、好きなだけ知ろうとした結果、現在発信しているジャンルの知識に偏ったというだけなんです。専門的・体系的に学んだわけではなく、自分の好きなものが積み上がって、知識体系ができてきました。
-そうなんですね。拝見していると、知識量で圧倒する内容ですよね。
黒子:元々は好きが転じて学び続けているにすぎませんので、知識がついた理由というのは、自分自身でもよく分からないんです。詳しいジャンルがある一方、音楽にまつわる知識など、全く関係のないジャンルに関しては、完全なる素人なんですよ(笑)。
-特化型なんですね(笑)。今日は、黒子さんがどのように学び、知識を身につけ、どんなことを考えていらっしゃるのか、お話をお聞きしたいと思います。
黒子:どうぞよろしくお願いいたします。
黒子さんが、学び始めたきっかけ。
-そもそも黒子さんは、なぜ民俗学やその周辺領域に興味を持たれたんですか?
黒子:記憶を振り返りますと、小学校低学年の頃。私たちが一年を通じて行う営みってありますよね。初詣に始まり、節分があり、春には桜が咲きお花見をして、入学式、お盆、お彼岸…。当時、こういった年間の営みを自分自身も、クラスのみんなも当たり前だと思って暮らしていました。
-はい。
黒子:そんな時に、同世代の親戚が私の住んでいる地域に遊びに来た。そうしましたら、全く習慣が違うってことに気がついたんですね。方言や、地域の寒暖差については、当時の私でも理解していましたが、「使っているお味噌が違う」などの文化的な違いに衝撃を受けたんです。
-あぁ!関東と関西でも違いますもんね。
黒子:その時、私は「国」という単位を強烈に意識しました。日本という1つの国の中でもこんなに文化が違う…当然ながら海外の国とはもっと違いますよね。まずはもっと自分の生まれた国のことを知りたいと思い、伝統・文化・伝統・俗信・俗習、土着の信仰などを広範に学びはじめました。
-なるほど。黒子さんは、フィールドワークなども手がけているそうですが、研究者に近いスタンスで学ばれていますよね。
黒子:フィールドワークは、YouTubeをはじめる前から続けているライフワークです。研究を目的に活動していたわけではないのですが、ふと振り返ると研究領域の一部と呼べる活動をしていたのかもしれませんね。
-かなり個人的な興味で活動されていたんですね。
黒子:現在では、むしろYouTubeのための活動やフィールドワークをしないように気をつけるようになりましたね。
-あまり、PV数を稼ぐための活動にはしたくないという意味ですか?
黒子:えぇ。カメラひとつ持って、野仏や神社を巡り、コメントするだけで動画になりますし、一定数の需要も予測はできます。でも、自分が今まで当たり前にしてきたライフワークが、YouTube以前/以降でスタンスが変わってしまうことは避けたいと思っています。YouTubeという媒体がいつまであるかも分からないですからね。
-YouTubeのフォーマットに依存しないようにしているんですね。
黒子:今も好きなものを淡々と続けていて、その一部を切り取ってYouTubeに出しているという感覚です。特別なことをしているわけでなく、ライフワークの断片を出しているという感じです。
寄せ集めでオンリーワンな日本神話。
-まずは日本を知ろうと活動されてきたとのことですが、現在、黒子さんは日本をどのような国だと捉えられているんですか?
黒子:「神話」という観点からお話ししてみます。日本には「記紀」=古事記・日本書紀という神話があります。伝承上の歴史を辿るうえで、非常に価値のある書物です。ですが、記紀が全くのゼロから作られたものではないことをご存知ですか?
-えぇ!?そうなんですか?
黒子:日本書紀の冒頭には、かなり短文ですが「命や国や時間、全ての概念が、無の状態から、天地が混沌とする中で、ボワっと色々なものが生まれた。その中から、私たちが神様と呼んでいる存在がいくつか生まれ、私たちの世界を段々と形成した」様子が描かれています。この混沌、混(まろかれ)、英語で言うならカオスの描写、実はこれ中国の古典「淮南子」からの引用だという事実があります。つまり、日本国の神話は、ゼロから生み出されたのではなく、他国の思想をベースに作られたんです。
-へー!
黒子:記紀の編纂に当たった人の記録をあたると、当時は他国の素晴らしいとされている文献を知っていること、それ自体が権威につながっていたらしいのです。名誉階級の方々からすると、情報を知っていることが大事で誇らしいことだったんです。分かりやすくいうと、安土桃山時代に「鉄砲を知っているとすごい」ですとか「カステラを食べたことがあるからハイカラでかっこいい」と言うような、そういうものかと思います(笑)。
-ちょっとミーハーなイメージですね(笑)。
黒子:日本書紀には、中国の根本思想である陰陽思想をはじめ、他にも八百万の神ですとか、人に迷惑をかけないといった道徳的な考え方も描かれていますが、これらも全て淮南子を参考に書かれていると言われています。
-日本は「八百万の国」と言われたりするので、独自のものだと思っていました。
黒子:記紀の編纂は、国内外に対して日本の力を広報する意味合いがありました。ブランディングの一環として、大陸を治める偉大な国家の根本思想を取り入れたという側面があったんでしょうね。
-かなり、目的を持って意図的に、ある種デザインされた神話と言えるかもしれませんね。
黒子:えぇ。このように神話が形成されるのは、世界的にみても非常に珍しいんですよ。エジプト神話、ケルト神話…大抵の神話は、暮らしている土地や環境を反映して生まれてくることがほとんどなんです。
特徴的なのは、日本の神話は、現存する天皇家へと受け継がれる物語になっていることです。天皇家という存在自体、世界的にみても非常に珍しい一族だと思うんですが、その一族を神話の伝承が支え続け、現代に至り、私たちの現実社会と繋がっています。
-古事記は、神話の世界でありながら、実在の人物とされる推古天皇に続く物語ですよね。
黒子:何もかもが独特で他国とは違うとも言えますし、逆に言えば世界のさまざまな文化を混ぜ合わせた神話でもあります。この事実からも日本はまさに「文化・伝統・伝承の国」と捉えられるのではないかと思います。
-ある種、神話を寄せあつめたとも言えるわけですね。
黒子:寄せ集めた結果、オンリーワンになったという、不思議な国なんですよ(笑)。ちなみに、現代の日本でも、同じように文化が形成されることがあるんです。
-えぇ?現代でも?
黒子:例えば、アフリカの方が日本の商業施設にいらっしゃると、フードコートにとても驚くんですって。多国籍な料理、異文化がずらりと並んで、1つの市場としてまとまっている様子にびっくりされると。
-あぁ!まさに寄せ集めでオンリーワン!
黒子:日本の神話は、まさにこのフードコートのようなものと言えるかもしれません。もちろん、世界の神話においても、太陽神のような共通項はありますが、これほどさまざまな引用やミックスで作られている神話は珍しいのです。
-まさに神話のフードコートなんですね。
黒子:えぇ。決して記紀が、パクリであるとかそういうことが言いたいわけではないんです。むしろ、フードコートに価値を感じる人は非常に多いですからね。
怪談や都市伝説は、「愚かさの象徴」。
-黒子さんのチャンネルも、フードコートのように文化・伝承だけでなく、怪談ですとか、都市伝説といった怪しげなものも柔軟に取り入れていますよね。
黒子:怪談や都市伝説は、「愚かさの象徴」として意図的に取り入れています。
-「愚かさの象徴」!?
黒子:怪談や都市伝説は、学問領域側から見ると「愚かだ」と言わざるを得ないことも多いですが、そういう愚かさこそが人間だと思いますし、生きるということだと思っているんですよ。
-なるほど。
黒子:そもそも「真実を語る黒子」というチャンネル名は、そういった愚かさに対するアンチテーゼでもあります。じゃあ、「真実」ってなんですか?と(笑)。
-改めて「真実」ってなんなんですか(笑)?
黒子:開設した2年前は、都市伝説のチャンネルが全盛期でしたが、「信じるのも信じないのもあなた次第」を前提に、発信者側の責任逃れの問題と隣り合わせの情報発信が多かった。あまりにも都市伝説という言葉が、なんでも許される免罪符になってしまっていました。
そういった状況に現行の学問上からの「真実」「答え」を提示できるチャンネルを作りたいという思いがあります。だから「真実を語る」と名乗ることにしたんです。
-学問上の正しい知識こそが「真実」であると。
黒子:もちろん、誰か特定の個人に向けたネガティブなメッセージではないんですよ(笑)。でも、私はそういった無責任な情報発信へのアンチテーゼのような思いで、チャンネル開設をしました。
私はフィールドワークをする中で、宗教に狂った方や、陰謀論に狂った方にも山ほど触れてきたので、情報発信の脅威は痛いほど理解しています。ですから、そういったおかしな狂い方をしないよう、ある種の頓服薬のようなチャンネルでありたいんですよね。
ご視聴いただいた皆さんに「あれ?でも黒子のチャンネルで、学術的にはこう考えられるっていってたよな」って思ってもらえたらいいなと思います。
-おかしな情報に触れたときに、少しだけ立ち止まるような作用をしたいということですね。黒子さんは、そういった注意喚起をするような動画も出されていますよね。
黒子:YouTuberに限った話ではなく、これは学問領域全体の問題でもあると思っています。コロナ禍でも顕著でしたが、エビデンスの確かなお医者様よりも、気軽に発言できる一般人の方が情報提供者として優れているような錯覚を起こしました。実際のお医者様は、体系的に学ぶ中で専門分野が細分化しているので、発言しにくいですよね。
-そうですね。
黒子:医学というのは積み重ねて正解の精度を上げていくものだと思います。
-割合、明確な答えに近づいていくイメージですね。
黒子:一方、民俗学の周辺領域では、学んだからといって、全てに◯×がつくというものではありませんし、学べば学ぶほど、正解が◯でも×でもいいというものに近づいていきます。
-どういうことですか?
黒子:1つ、例を出しますね。愛媛周辺には、「お客様に見えないよう、箒(ほうき)を逆さにして手拭いをかけると早く帰ってもらえる」という俗習があります。
-あぁ。京都のぶぶ漬け的な。
黒子:これ、長らく信じられ、伝承されてきたそうなんですけど、冷静に考えたらそんなわけないんですよ(笑)。
-(笑)。
黒子:ここで大事なのは、これが伝承されてきた背景には、「あの儀式をやっていなかったら、もっと長く居座られたかもしれない」という精神状態があります。愚かな行動だとしても、結果として自分への救いが生まれる。「これくらいの長さで済んでよかった。箒のおかげだ」と。つまり、行動自体の良し悪しは、学問を学んでいたところで、なんの影響もないわけです。この話を総合して考えると、◯でも×でもないと考えざるを得ませんよね。
-なるほど。正解がよくわからない民俗学周辺から、どうやって真実を掴み取るんですか?
黒子:ルールを知らないとスポーツが楽しめないように、こういったものを、楽しむためには、かなりの知識が必要だと思うんですよね。だからこそ、広範な知識を学んでいくことが大事だと思います。
-あぁ。広く学んでいれば間違いに気がつけるのかもしれませんね。
黒子:「愚かさの象徴」なんていうと悪口のように聞こえてしまうかもしれませんが、私は「我々が楽しんでいることって、愚かさの象徴なんですよ」って肩を組んでいるような感覚なんですよ。
-「愚かである前提に立って、楽しもうよ!」と。
黒子:そうなんです。例えば、私が大好きな、かなり愚かで楽しい都市伝説があります。電子レンジというのは、墜落したUFOの技術を転用したものだと主張する方々がいらっしゃるんですね。
-電子レンジがUFO…?
黒子:その方々が、なぜそんなことを言い出すかというと、色々な技術が進歩する中で「電子レンジは大きさが変わっていない。つまり、宇宙人が完成させた高度な技術なので人間には進化させられないのである」と主張するわけです。
-はぁ(笑)。
黒子:この答えは単純で、レンジが小さくなったらお皿が入らなくなるからに決まっていますよね(笑)。中に入れるものより小さくなるわけがありません(笑)。
-(笑)。
黒子:本当に愚かなことだと思うんですが、この愚かさというのは、私は愛するべきだと思うんですよ。宇宙の技術を取り入れたものが一家に一台あると思えるのは、楽しいことですからね。
-ある種のファンタジーすら感じられますね。
黒子:それを楽しんでいる時点で、都市伝説を愛好する方々と、私は同じ穴の狢・同好の士でもあるんですよ(笑)。でなければ、こんな格好で、カメラのあるところに出ていくなんて愚かな真似をするわけないですからね。私にとっては自虐みたいなものでもあります(笑)。
-(笑)。
私たちは、どう生きるか。どう学ぶか。
-黒子さんは、何か大きな目的に向かって、興味を掘り下げ、学んでいるんですか?
黒子:目的と言えるかわかりませんが、自分自身の限られた生の中で、学び続け、全てが埋まり繋がったなと実感が得られればいいなと思います。例えば、民俗学に限っても自分の好きなだけ学んだ結果、体系的に理解ができるような結果になるといいなと。
-あぁ。好き勝手学び、結果として、体系的に理解したいんですね。
黒子:ビンゴの穴を埋めていくような学び方がしたいんですよね(笑)。そうした学びの果てに、自分を振り返り、どれだけの本を読み、何キロも歩き回りフィールドワークをして、どれだけ学べたか。そういったことを噛み締めながら、死んでいきたいというそういう思いでいます(笑)。
-死んでいきたい(笑)!?
黒子:極端にいうと、そうです(笑)。あまりどう生きたいかではなく、どう死にたいか…というようなことを考えています。「君たちはどう生きるか」ではなく「どう死ぬか」ということです(笑)。
-今際の際で振り返るために学ばれているんですね(笑)。
黒子:まず、前提として何かを学んだからといって、必ずしも実るものではないと思うんです。実ったとしても、その実は食べられるのか、使うことができるかというと、そうとも限りません。
良く「小学校で習った理科って、大人になって使うのか?」なんて言われたりしますよね。
-あぁ。古文・漢文なども昨今、槍玉に上がりますね。
黒子:確かに学んだ瞬間は知識になりますが、それを使うとなると別問題です。ここで重要な論点は「それが無駄かどうか」ということ。ちょっと極端に考えてみますと、小学生の頃に大人になってから使わない学びを一切カットしたらどうなるでしょう?体育も必要ないかもしれませんし、地図記号なんかもいらないかもしれません(笑)。
-確かにGoogleマップとかあればいらないかもしれませんよね(笑)。
黒子:そういう状態は、私にとっては「学びであるけれど学びでない」状態なんです。私にとっての学びを、旅に例えるなら、目的地に至る道中の景色や出来事、全てを楽しむことです。結果的に目的地に辿り着かなくても、そういった経験は糧になりますよね。
-そうですね。
黒子:そして、学ぶことは失敗すること・分からないことを自覚すること、悩むことでもあると思います。私も、YouTubeで話していて、ど忘れしたり、うまく話せないことがたくさんあります。私は、この失敗するということそのものが、学びだと考えています。
ですから、学びを学びと理解しながら進めていくことは現実的には不可能だと思うんですよ。そういった失敗も含めて学び続け、自分が死にゆく際に、正解か不正解かがようやくわかるというようなものが本来の学びの意義かと思います。なので、方法論はともかく、どんな知識や経験でも、一旦身につけていくべきものだと考えています。
-あまり学びと意識せず、なんでも知ることが大事なのかもしれませんね。
黒子:一言に「学び」といっても、非常に難しいですからね。「赤ちゃんがなぜお乳を吸えるようになる」のかは、専門的には学習に分類されると思うのですが、私たちが普段使っている学習とはちょっと違い、生まれた瞬間からわかっている本能と言えますよね。どこまでが学びなのか、学び続けるうちに気が付くのかもしれませんね。
-何が学びかを理解するためにも、学び続ける必要があるのかもしれませんね。
黒子:なにより、知識を知っているから偉いということではないですから。理解しているものをシェアするだけでなく、理解できないものをシェアすることで、理解が深まるということもありますからね。
-どういうことですか?
黒子:例えば、日本の古い文献を辿る際に、読み方や発音、イントネーションがわからない場合、これを明らかにする際には、人々が文字に起こした際の間違いを探すそうです。
例えば、「発光」の読み方を「はつひかり」と読んでいたとします。でも、様々な文献に「はつこう」「はこう」などと間違って書かれている例が見つかることで「あぁこれははっこうと読むんだな」と分かりますよね。
-あぁ。なるほど。
黒子:そのように、学問には、間違いによって、正解を導いていく場合もあります。失敗した人や、間違ったことから教えてもらうことは、大きなプラスにもなり得るからこそ、知識のあるなしに関わらず、肩を組んで色々なことをシェアしていくことが大事だと思っています。
文化を伝承していくための寄付活動。
-黒子さんは、寄付活動にも力を入れてらっしゃいますよね。
黒子:貧困問題を抱える子供の問題には、私も非常に心を痛めています。子ども食堂やフードパントリーなど、貧困解決を志す団体さんへの寄付は、Youtuber以前から続けていましたが、自分自身の生活を圧迫せずに、もっと何か寄付を広げていけないかとチャンネルを開設したんです。元々収益を寄付するための活動なんですよ。
-そうなんですね。
黒子:現在は、Youtubeの収益の中から、食べ物・飲み物・文房具なども寄付しています。
日本は経済格差も開き、貧困が増加の一途を辿り、義務教育以上の習い事ができない子も増えています。ですから、個人でも書道や硬筆ペンなどを教える教室を開いたり、水彩画や油絵、押し花など美術を教えたり、学校では教えないことを教える活動も続けています。そういう活動の大きな原資として、YouTubeが機能しているというような状態です。
-元々が寄付をするためのYouTubeチャンネルだったんですね。
黒子:先ほど「国という単位を意識した」と話しました。では、国の繁栄とは何かと考えると、人口が増えること、もしくは人口を維持できることだと思います。少子高齢化が進む現在、大人の私たちが、余力のあるうちに子供たちに投資をしないと、国自体の繁栄が起きない。国が途絶えると、文化・俗信・俗習・神話・怪談などの伝承は途絶えてしまいますよね。ということは、子供こそが、文化であり、伝統である。ちょっと遠回りに思われるかもしれませんが、そのように考え、文化を担う大人の責任として、そのような活動をしています。
-素晴らしいですね。
黒子:いえいえ。そんなことはないですよ。現実的な範囲で考えると、この寄付活動を大きくしたいと考えています。日本円の価値から考えると、ある程度の金額で、海外の貧困国に交番や学校が割と簡単に作ることができます。
-そうなんですね。
黒子:日本で、それに近しいことを実現するのは、企業や行政の仕事になりつつあるので、個人ではなかなか難しいことです。でも、できる限りは1つの共同体としての「国」と、そこで暮らす子供たちにギブを続けたいです。
-個人として、できることを粛々と続けていくことが大事なのかもしれませんね。
遊びを学べるシステム。
-これからの夢はありますか?
黒子:現代は、いらないものをいらないと言える時代、無駄なものを無駄と切り捨てる時代です。例えば、受験勉強などもそうかもしれませんが、効率を重視し、最適解のみを正解としていく。無駄なことを学ばなかった子どもたちが、きっと無駄をたくさん経験してきた子との差が大きくなってしまうと思っています。
-あぁ。もっと無駄なこともやっておけば良かったと。
黒子:そう思った際に、無駄だと思っていたものを一括で学べるようなシステムを作れたらいいなと思いますね。アクセルやブレーキにも”遊び”がないと、急発進・急停車しかできないように、遊びなく育ってしまうと、精神的なコントロールが効かなくなってしまうのではないかと心配している。ですから、皆さんには、無駄を楽しむ学び方をしていただければ嬉しいですね。
-黒子さんのチャンネルがまさに、そういう無駄を学べるシステムなのかもしれませんよね。
黒子:そうなってくれたら嬉しいですね。
これからの世界で失いたくないもの。
-では、最後の質問です。黒子さんがこの先の世界で失いたくないものはなんですか?
黒子:失いたくないもの…えぇ〜?なんだろう?あまり執着がないので、寄付とかもできていると思うので…なんでしょう…。
「全てを手放せる心」を失いたくないですね。全てを投げ打てるくらいの余裕というか、執着しない心を失いたくない。
-矛盾していて面白いですね(笑)。
黒子:「執着しない心」に対する執着ですね(笑)。
Less is More.
さて、いかがだっただろうか。見た目は怪しくとも、その語り口はジェントルマンそのもの。非常に優しく諭すように色々なことを丁寧に語っていただけた。情報を楽しむためにも、学び続けることの重要性を改めて考えるきっかけをいただけたと、そう思う。
(おわり)