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インフォマート✖︎アカデミストが模索する異分野連携の可能性。オープンアカデミアの未来。

研究者のためのクラウドファンディングを運営するアカデミスト株式会社が主催する「academist Prize」。この活動に当メディアを主催する株式会社インフォマートが冠スポンサーに就任した。

それを記念して、2024年末、アカデミスト株式会社が主催した「Open academia Summit 2024 ~みんなでつくる研究の未来~」では、インフォマートの木村取締役と村上取締役をゲストに迎えたトークセッションが開催された。モデレーターはアカデミストの柴藤代表。

「ステークホルダーと考える、オープンアカデミアの未来」というテーマでアカデミアとビジネスのオープンな関係を模索する対話。ぜひご一読ください。

柴藤 アカデミスト代表取締役(以下、柴藤):本日は、academist Prize第4期の冠スポンサーでもある株式会社インフォマートから木村さんと村上さん、お二人の取締役をお迎えし、オープンアカデミアの未来についてお話したいと思っています。まず、改めてインフォマートはどんな会社かお聞きしてもいいですか?

村上 肇 インフォマート取締役(以下、村上):インフォマートは、受発注や請求書などの企業間取引を効率化するシステム/サービスを提供するいわゆるSaaS企業です。先行者優位もあって、フード業界ではシェアナンバーワンをいただいております。2015年頃から力を入れている電子請求書のサービスも、大手企業を中心にご利用いただき、順調にシェアを伸ばしています。

柴藤:ありがとうございます。我々も知り合う前からインフォマートの「BtoBプラットフォーム」を使わせていただいていたのですが、運営会社までは意識していなかったんですよ。今回取り組む際に「あ、うちも使ってた!」と驚きました。今回の冠スポンサーに就任していただいた経緯をお話しいただいてもいいですか?

村上:弊社のサービスをご利用いただいている100万社以上の企業にアカデミックな世界を知っていただきたいと考えました。インフォマートは現在、大学や研究機関と連携しながらAIやデータ活用の推進をしています。
実際に自分達も産学連携の可能性を模索する中で、アカデミストの活動を知り、学術業界への問題意識、企業との連携が描く未来像に共感したのでスポンサードさせていただきました。

株式会社インフォマート/村上取締役

柴藤:そもそも今回のスポンサードは、私が「Less is More. 」にインタビューいただいたことがきっかけでしたね。

木村インフォマート取締役(以下、木村):そうですね。「Less is More.」はアカデミック業界の方々にインタビューすることも多いメディアなので、自然な流れでした。

柴藤:今までアカデミストのスポンサー様は、比較的アカデミック業界に近い企業が多かったんです。インフォマートさんは企業間取引がメインの、アカデミック業界からは距離のある存在だったので、私たちとしてはすごく新鮮でした。新しい道を模索しながら連携できたらいいなって思っています。

木村:弊社のサービスをご利用いただいている企業のニーズをアンケートから拾うと、大学や研究機関、研究者の皆様と取り組みしたくても「どこから手を付ければいいかわからない」「繋がりがない」という声が多くありました。
例えば、農業を手がけている事業者とレストランをつなげる…そういったマッチングはインフォマートの得意な領域なんですね。
なので、企業と大学・研究機関や研究者さんをマッチングさせることができるのではないかと考えました。アカデミストさんは10年にも渡って、研究者やアカデミック業界とさまざまな関係を築いてきたわけですから、ご一緒することで何か生まれるのではないかと直感的に思ったんですよね。

株式会社インフォマート/木村取締役

柴藤:アカデミック業界には、どのようなイメージを持たれていましたか?

木村:私自身は、大学生の頃に研究者の方々とそれほど触れ合わないまま就職し、企業で働いてきているんですね。ですから、研究者はご飯もあんまり食べなくって、お酒とかも好きじゃなくって…とか、色々こう…失礼を承知で、ちょっと変わった方々なんじゃないか?とか勝手な妄想を抱いていたわけですよ(笑)。

会場:(笑)。

木村:私だけでなく、多くの企業に勤める人からするとそう見えていることって多いと思います。一方で、研究者の人たちからすると、会社員は社会の役に立ってないのに声ばっかりでかい人たちと、見えているかもしれませんよね(笑)。

会場:(笑)。

木村:まずは、こういうお互いの認識ギャップを埋めることから始めたいと思いまして。「Less is More.」のインタビューを通して出会った研究者の皆さんとお会いする機会を定期的に設けたんです。実際に研究者の方々にお会いすると、気が合う人たちも多くてすごく面白い。「あ、やっぱり、きっかけさえあれば、分かり合うことができるんだ」と実感できた。そういった体験を通して、アカデミック業界の人々は、今はとっても良いイメージに変わりました(笑)。

柴藤:一部の研究者を除くと企業と出会うきっかけって全くないですもんね(笑)。

今回のイベント主催/モデレーターも務めたアカデミスト株式会社 柴藤代表。過去のインタビューもぜひご一読いただきたい。

柴藤:今回のセッションのテーマは「オープンアカデミアの未来」としています。まず、私たちが考えるオープンアカデミアについてお話ししますね。現在のアカデミアは閉鎖的だと感じています。その主な原因は、資金の大部分が公的資金に依存していることにあります。研究者たちは資金を得るために、国や大学が評価しやすい研究に集中しがちです。その結果、納税者から見ると、何を研究しているのか分かりにくい状況が生まれています。

しかし、資金源がよりオープンになれば、研究者が多様な関係者と繋がる機会が増え、新しい価値が生まれる可能性があります。これが私たちが考えるオープンアカデミアの姿です。インフォマートも、オープンアカデミアに向けた取り組みを進めているとお聞きしていますが、具体的な連携事例を教えていただけますか?

村上:現在、AIを活用してレストランのメニュー構成や店舗レイアウトを最適化することを目指す研究チームと連携しています。私たちが持つ食材のデータと研究者の知見を組み合わせて、外食業界の課題を解決しようとしています。当社は外食業界との繋がりがあるので、現場の声も集めやすいので研究チームにとっても有益な情報をシェアできると考えています。

柴藤:企業の強みを活かした素晴らしい取り組みですね。

村上:我々もこういった産学連携は初めてだったので、どう進めたらいいか、どれぐらい資金が必要か、チームと対話することから始めました。結果的に初年度は比較的小さな投資からスタートできたんです。こういった前提条件から対話し、無理のない取り組みができるというのは多くの企業が望んでいることだと思います。これから産学連携に挑戦したい企業にとって、良いモデルケースになったらいいですよね。

柴藤:研究者の方々との信頼関係が強くなれば、コラボレーションがますます加速しそうですね。

木村:コラボレーションだけでなく、ビジネス的にも産学が連携することでさまざまな活動が広がります。
例えば、インフォマートのサービスを使っていただいている大学の就職課には、私たちの「業界チャネル」というサービスを無償で提供しています。

木村:「業界チャネル」は、日本のすべての業界、産業構造、そこに属するプレーヤーの詳細などが分かりやすくまとまっています。これから就職しようとする学生にとても有益だと、口コミで広がって使用率も上がっているんですよね。

柴藤:単純に研究としての連携だけでなく、アカデミック業界全体と組むことで可能性が広がるということですね。

木村:えぇ。企業とアカデミック業界、双方の利益になるようなコラボレーションは、さまざまな可能性があると考えています。

柴藤:ちなみに実際にアカデミック業界と繋がってみて、オープンだと思いますか?

村上:オープンさはあまり感じてないというのが正直なところです。研究者の皆さんは個別に情報発信されているとは思うものの、企業がどのように関われるか分かりにくいんですよね。そこをもう少し噛み砕かないと、アカデミック業界が開いているとは感じづらいかなという印象ですね。

木村:問題は発信の仕方だけなんじゃないか、とも思います。企業は、ターゲット層に響くように情報発信していますが、研究者や大学の方の発信は誰に向けて発信をしているのかよくわからないんですよね。

柴藤:実は我々も同じ意見ですが、研究者の発信の仕方が悪いというよりは、業界の構造的な問題だと考えています。研究者には、分かりやすく発信するインセンティブがないんですよね。発信しても、ポジションが上がるとか、研究費に直結しないことがほとんどですから、発信の優先順位が低いんですよ。
アカデミストはこういう状況を変えていきたいと思っています。今後、どういうことができると、アカデミック業界のクローズド構造が良い意味でオープンになるとお考えですか?

木村:やはり、研究者と企業のマッチングと橋渡しが鍵になると思います。

村上:企業も研究者も、双方の求めることや手助けし合えることをなるべく具体的に提示していくといいのかもしれませんね。
私たちも運営する中で「こういう食材を探しています」ですとか「秋の運動会に売れそうなものありませんか?」といった具体的な提案があってこそ、マーケットが活性化しますからね。

柴藤:実際に研究者が何かしらの魅力的な提案をしたとして、企業はどれくらい手を上げて、支援していただけるとお考えですか?

村上:分野にもよりますが、ある程度狙いを定めた企業に向けて尖った研究テーマをぶつけてみるのがいいのではないかと思いますね。私たちの持つ企業側のニーズや情報を参考にしながら、一緒に考えながらやれるといいですよね。

木村:私たちのクライアントは、フード業界だけでなく建設業界、不動産業界…あらゆる業界と繋がっています。ですから相性なども鑑みながら、幅広くアカデミック業界との協業を少しお手伝いできるかと思っています。支援自体、そんなに難しくなく実現できるはずですが、企業側も不勉強なところが多い。私たちも事例を作りながら、学び、伝えていくことが必要だと思いますね。

柴藤:個別の研究者との連携やある問題に特化した研究と企業の連携はイメージできましたが、基礎研究といった、今後科学発展のベースとなるような価値を作っていくような研究にも支援いただけるものですか?あまり直接的な企業のメリットにはならないようにも思います。

村上:むしろ、そういうニーズは高いと思います。
例えば上場企業は、ESGといった指標を報告書としてまとめて発表していますから、社会貢献にきちんと予算を割く必要がある。そういう中で、未来の研究者への支援は非常に重要ではないかと思っています。大きな企業であればあるほど、アカデミック業界の支援をできる可能性はあるのかなと思います。

柴藤:ぜひ、インフォマートさんを先頭に、研究者と企業の新しい循環を創っていけるといいなと思います。本日はありがとうございました!

Less is More.

インフォマートの持つ企業ネットワーク、アカデミストの持つ研究者との繋がり、そして、「Less is More.」のようなメディアを通した情報発信。それぞれの強みを活かし、互いに連携することで、これまで分断されていた二つの世界が交わり、新たな価値が生まれる可能性を感じることができた。
今回の対話は、まだ始まったばかりです。今後、この取り組みがどのように進化していくのか?引き続き、その動向をお伝えしてまいります。

イベントでは、さまざまな研究者を企業が表彰する一幕も。インフォマート賞はacademist Prizeに参加する渡部綾一氏の研究が選ばれた。

(おわり)


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