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物性物理学は、世界をハックして、未来を創造する。高三和晃氏インタビュー。

「物性物理学」をご存知だろうか。今回インタビューをする、東京大学理学系研究科物理学専攻・助教の高三和晃氏は「物性物理学を知ることで、世界の見え方が変わる」と語る。量子力学や統計力学といった大学で学ぶ物理学を理解した上でようやくその面白さが分かるという難易度の高い学問だが、まさに私たちの日常と地続きの話であり、圧倒的な未来の話だ。

高三和晃:理論物理学者。専門は物性物理学。主に、非平衡状態の量子多体系に生じる「非平衡物質相」の研究に取り組んでいる。京都大学大学院にて博士号(理学)を取得後、カリフォルニア大学バークレー校での研究員を経て、2022年4月より東京大学大学院理学系研究科にて助教(現職)。また2022年10月より科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者として、量子技術・量子コンピュータへの非平衡物質相の応用を目指す研究にも取り組む。
高三氏のTwitter:@takasan_san_san

-今日は「物性物理学の入門編」としてお話をお聞かせください。

高三:よろしくお願いします。物性物理学は専門でない方に説明するのがいつも難しいのですが、私たちの日常や社会、未来を変える可能性のある学問です。一度理解すると世界の見え方が変わるので、ぜひ面白さの一端でも理解していただけると嬉しいですね。

-「物性物理学」非常に難しくてなかなかどこから理解したものやらと挫折してしまうんですよね。

高三:なので今日は、厳密さにこだわらず、細かいことは端折りながら、極力分かりやすくお話するようにしますね(笑)。まずは、物性物理学は「量子力学」と「統計力学」という二つの学問の上に成立しています。これらは標準的には、大学の物理学科の2年生か3年生でようやく勉強するもので、それなりに難しいです。この二つが物性物理学をやる上での基本的なルールブックとなります。

-もう前提からして難しいんですね(笑)。

まずは量子力学を知ることから。

高三:そうですね(笑)。この二つを説明するところから始めましょう。まず「量子力学」は、原子・分子・電子といった、とてもミクロな世界、例えば“10のマイナス10乗(0.0000000001)メートル”とか、そういったとっても小さな世界の現象を扱う学問です。

-物凄く小さなものを研究すると。

高三:はい。イメージ的には「世界や私自身を構成する“粒”の持つ性質」を考える、と言ってもいいかもしれません。

-「私自身を構成する最小の粒とは何か」と考える面白いですね。

高三:古くから、物質を構成する最小要素として「原子」という存在自体は考えられてきましたが、20世紀初頭にようやく「原子は、原子核と電子から出来ていて、原子核の周りを電子という粒が回っている」というモデルが確立されました。ただ、この電子は、身の回りにあるボールと同じように回っているわけではないんです。専門用語で言うと“波動関数”というもので記述されるのですが、測定するまでは電子の位置は確定しておらず、いわば確率的に存在しています。どこらへんにいるかは決まっていますが、具体的にどこにいるか(粒子の位置)は決まっていないわけです。いわゆる「シュレーディンガーの猫」みたいなことがミクロの世界では実際に起きているわけです。

-箱の中の猫は観察するまで生きているか死んでいるか確定していないという思考実験ですね。

熱を込めて様々な図解もしていただけた。

高三:えぇ。ともかく、ミクロな世界では、僕たちが直感的に抱くような実在像を捨て去らざるを得ないことが明らかになってしまったんです

-すごく素朴な疑問なんですが、この原子とか電子っていうミクロな粒っていうのは、物質によって違うんですか?

高三:それはすごくいい質問ですね。もっとも小さい、それ以上に分解できない粒を「素粒子」と呼びますが、どんな物質もバラバラにしていけば、数種類の素粒子で出来ていることが分かっています。いわば、あらゆる物質は同じ粒から出来ているわけです。

-えぇぇ!?じゃあ例えば金属と人間の細胞は同じ素粒子でできているということですか!?

高三:そうなんです。私たち人間であれ、目の前にあるテーブルであれ、物凄くミクロに見ていった時には、クォークや電子と呼ばれる素粒子の集まりであって、その電子やクォーク同士の間に差はないんです。例えば、別々の物質から、それぞれ電子を持ってきても、それらは完全に同一のもので、区別できません。この世界をどんどん分解していってしまえば、私たちの世界は同一の材料で構成されていると言っても良いでしょう。

-ちょっと信じられないような事実ですね。

高三:当たり前と思っていた日常がグラグラして、足元から崩れ去るような気持ちになりますよね(笑)。現在では、素粒子には電子や、グルーオン、クォークなどいくつかあり、これらが“電磁力”・“引力”・“強い力”・“弱い力”の4つで相互作用することで多様な世界を生み出しています。

-“強い力””弱い力”!?

高三:ふざけたようなネーミングですが、学術的にもそう呼ばれているんですよ。私も初めて知った時は「ふざけているのか?」と思いました(笑)。これについても色々と語りはじめると長くなるのですが、本日は割愛しておきます。なんにせよ、こうした素粒子や、素粒子間に働く相互作用については、すでにある程度のレベルまで解明されていて、それらの知見を集約したモデル、いわばルールブックのようなものが「標準模型(Standard Model)」と呼ばれ、確立されています。

-なるほど。

高三:この標準模型は、ある意味では世界をあらわす究極のモデル、究極の数式と言えますね。私たちの世界にある万物の振る舞いを、(人類が現在知っている限り)最もミクロのレベルで解明しているんですから。とりあえず、量子力学や素粒子の世界の説明は、ここまでで一旦終わりにしておきます。

-頭がクラクラしますが、まだ物性物理学には辿り着いていないんですね(笑)。

高三:ここまでは素粒子物理や原子核物理と呼ばれるミクロな世界の話ですが、ここから思いっきり私たちの日常世界、マクロ世界に帰っていく話になります(笑)。ここから現実世界に戻る旅こそが物性物理学とも言えますので、楽しみにしてください(笑)。

この世界は同一のものでできているのに、僕たちはこんなにも違う。

-もう一つの物性物理学のルールである「統計力学」について教えてください。

高三:その前に、物性物理学における重要な問いを考えてみましょう。「この世界は同一のものでできているのに、僕たちはこんなにも違う」、これはなぜでしょう?

-えぇ!?な…なんででしょう?

高三:今日はこれに対する一つの答えとして、物性物理学の偉大なリーダー的研究者であったフィリップ・アンダーソン氏が1970年代に書いた「More is Different」という論文をお持ちしました。

高三:これが書かれた当時は、素粒子などのミクロ世界に関する重要な発見がどんどんなされ、大変盛り上がっていました。そのため、そうした「世界の全てを記述するミクロ世界の法則」を探究する学問こそが、最も重要な基礎研究であって、それさえ分かれば、あとはその組み合わせや応用で分かってしまう。そうした応用研究を見下すような傾向があったそうです。極端に言えば、究極のミクロな法則が分かってしまえば、その集合を扱う物性物理学なんて簡単に分かってしまう、ただの応用問題だよね、という風に。

-あぁ。でも確かにそう思いますよね。

高三:それに対するある種の反論として発表されたのが「More is Different」というアンダーソン氏の論文でした。この論文には、大雑把に言えば「全体は部分の単なる合計ではない。それでは理解できないことがたくさんある。だから階層ごとに科学が必要だ」ということが書かれています。この論文の中身自体は、アンダーソン氏の深い洞察が詰まっており説明が難しいので、代わりに簡単な例で説明します。例えば、1個・2個・3個と粒子がいくつか集まるのではなく、沢山の粒子が集まることで全然別の性質が出てくることがあります。

-どういうことですか?

高三:例えば、水は冷やすことで凍りますよね?では、水の分子一個って凍ると思いますか?

-分子一個だと感覚的にですが、凍らない気がします。

高三:そうなんです。すごく噛み砕いていうと、氷というのは、水分子の集団を冷やすことで、それらが規則正しく整列した状態のことです。ということは、分子一個では原理的に氷にはなり得ないんです。ミクロな要素が多数集まることで、初めて生じる性質がある。それが「More is Different」という考え方です。

-なるほど!

高三:More is Differentは、物性物理学の基本となる考え方と言うことができます。物性物理学とは、端的に言えば「素粒子がどのように集まって、私たちの日常世界が作られているのかを探究する学問」です。量子力学のミクロな世界から出発し、マクロな世界、すなわち私たちが目にする物質が、どのように作られているかを理解する。いわば、More is differentが「どうして」生じるかを明らかにするわけです。そのためには、量子力学に従う原子や分子たちの“集団”の性質を統計的に調べるために「統計力学」が必要になります。

-あぁ!だから量子力学と統計力学が必要なんですね!原子や分子がたくさん集まっているので、それらを統計的に理解しないといけないんですね!

高三:厳密に言えば、統計学と統計力学は違いますが、大雑把には、そのように理解いただいて良いと思います。量子力学に従う素粒子たちで世界を組み立てて、統計力学を使って集団としての性質を理解する。これが物性物理学のごく簡単なイメージです。温度とか圧力とかは、分子一個からは(普通の意味では)定義できません。その集まりを、統計力学を使って調べることで、初めてミクロとマクロを繋ぐことができるんです。「ミクロの世界から私たちの日常を眺める」と言うこともできるかもしれません。

-本当にミクロからマクロに帰ってくるような、すごく壮大な学問ですね!

高三:ようやくマクロの世界に帰って来れましたね。おかえりなさい(笑)。

-お話をお聞きすると、物性物理学の研究範囲って、まさに僕らの暮らす世界や、日常のすべてですよね。

高三:そうなんです。生物など、現在の物性物理学の範疇を超えたものもありますが、身の回りの多くのものが対象になると言って良いと思います。実際、私たちの世界にあるモノは、こんなにも多様で違っています。でも、構成している粒は全部一緒。「なんで電気を通すものと、通さないものがあるの?」とか、「なんで透明な物質と、そうでないものがあるの?」とか「なんで鉄は磁石にくっつくのにアルミはくっつかないの?」とか、ある意味では、とても日常的な疑問が物性物理学の研究につながります。この世界のありようを理解しようということですので、おっしゃる通り、めちゃくちゃ研究対象が広いんです。

-そうですよね。物性物理学の至上の目標みたいなものってあるんですか?

高三:物性物理学では、まず、この世界の「多様性」を理解することが重要です。あの物質も違えば、この物質も違う。なぜだろう、と一つ一つの違いを明らかにして、その全体像を明らかにしていきます。しかし、それだけでは「あれもこれも違ってケースバイケース」って感じになって「至上の目標」みたいなものは無いようにも思えます。しかし、実際はそんなことはなくて、多様で複雑な世界をいかに統一的に理解するか、というのも重要な目標です。言い換えれば「マクロな世界には基本法則や統一的なルールみたいなものはないのか?」というのは重要な問いと言えると思います。

-あぁ。集まることで、また統一のルールみたいなものが生まれるのではないかということですね。

高三:普遍性(ユニバーサリティ)という考え方があります。さきほど紹介した水が氷になるのもそうなのですが、物質のマクロな状態がガラリと変わる現象を「相転移」と呼びます。相転移は水だけでなく、あらゆるもので生じるのですが、実は、全然異なるモノで生じる相転移が、ある意味で同じタイプである場合があります。例えば、さきほどの水で生じる相転移と、ある種の磁石が示す相転移が、ある意味で「同じタイプの相転移」であることが分かっています。最近は、生き物の群れが示す相転移も同じなのではないか、という研究もあります。もちろん全てが一緒というわけではありませんが、「マクロの世界はただ多様で、てんでバラバラ」なのかというと必ずしもそうではなく、そこには隠れた普遍性があったり、系統的に分類ができたりするんです。

-あぁ。マクロのルールみたいなものを探っていくのが一つの大きな目的なんですね。

世界のルールを知ることで、未来をハックできる。

高三:物性物理学が明らかにしてきた知見は今までも社会を変えてきましたし、未来においても変えていくと思っています。

-それはなぜですか?

高三:例えば、半導体は現代社会を支える重要なテクノロジーの1つですが、“半導体とは一体なんなのか?”を説明するには物性物理学の知見が不可欠です。物性物理学によって材料の成り立ちが分かり、それを踏まえることで、半導体をどう扱ったら良いか、どう扱えば効率的に利用できるかが分かります。

-あぁ!そうか、材料を扱うことですごく工業的なものとも距離が近いんですね!

高三:私たち物性物理学者にとっては「よく分からない物質」を研究することが出発点となることが多いです。その物質を研究し尽くし、その成果をエンジニアリングに受け渡す。そうすると、すでにその物質の特性が分かっているので、それを使って何ができるかという問題を考えるステップに進めます。半導体に関しても、スマホやPCなど、現代のありとあらゆるデバイスに使われていますが、これも物性物理学無くしてはあり得なかったと思います。

-ミクロな世界から日常を直接的に変える…振り幅がダイナミックな学問ですね。

高三:だから、物性物理学をもっと皆さんに知って欲しいんですよね。実際、デバイス技術への応用を目指している研究者もたくさんいます。私だって、自分のアイデアを世界の役に立てたいと思って日々研究しています。実際、中には自分が発見した成果を生かした特許を持っている理論研究者もいるくらいです。

-なんていうか、すごくビジネス的な意味でも未来を感じますね(笑)。

高三:物性物理学は、いわば「この世界をハックする」学問と言えると思います。金属にはなぜ電流が流れるのか、どうして磁石にものがくっつくのかを分かっているかを理解する。深く理解しているからこそ、何を使えば効率的に電気を流せるか、どうやれば強力で安価な磁石が作れるかが分かる。自分自身や身の回りのことを深く知ることで日々を効率的に生きる、ライフハックと同じですよね(笑)。

-へー!

高三:これとこれを組み合わせてあげればもっと便利な材料を作れるんじゃないか?そして、その材料が社会をこのように変えるんじゃないという予測…というかある意味、“予言”ができてしまうんです。世界の仕組みをハックすることで、新しい「モノ」を生み出し、それの力で未来を変えていくわけです。もちろん、新しくて価値のある材料や新技術を生み出すのは容易ではないのですが、実際、物性物理学の研究の中から社会を変える発見が数多くなされてきました。そういう意味では、未来を知るためにも、物性物理学を学ぶのはオススメです。

-確かに、単なる予測よりも確実性が高いですよね。

高三:例えば、なぜこの金属に光沢があるのか、私たちは数式を使って説明できるわけです(笑)。物性物理学というのは生活の中で不思議に思ったたくさんのことに答えてくれる学問なんです。学ぶことで、いわば、身の回りがすべてエンタメ化するようなものです。知ることで、この世界の舞台裏を身近に感じられるようになると思います。

-確かに、日常の見え方が全然変わる学問ですね。お話をお聞きするだけでも、壮大なSFを聞かされているような気分です。

高三:ますますSFチックに感じていただけるかもしれませんが、物性物理学は最近、宇宙の研究とも繋がってきています。例えば、ブラックホールの性質を解明するのに物性物理のモデルやテクニックが使えるのではないかと言われ近年盛んに研究されています。

-宇宙の研究にまで波及するんですね…!

高三:人々の集団を研究する社会物理学という分野もありますし、植物の光合成をミクロまで分解すると量子力学的に理解できるのではないか?という研究もあります。こういった「生き物と物質の間」みたいなものにも、物性物理が関係してくると面白いなと個人的には考えていて、最近「ミクロな世界に動物のような群れは存在するか?」という研究(この研究に関するプレスリリースはこちら)を行っていて、少しずつ迫っていこうとしています。生物と物性物理の関係は未開拓で、まだまだ未来の話なのですが、物性物理学は、そういう発展すらあり得る、懐の深い学問であると私は考えています。

世界のルールの外を描く「非平衡物質相」の研究。

-高三さんは、そういった物性物理の中でも、どのような研究をしているんでしょうか?

高三:ようやく専門の話に辿り着きましたね(笑)。私は「非平衡(ひへいこう)」な物質に関する理論研究を専門としています。

-非平衡?

高三:非平衡を説明するために、まずは「平衡」から説明せねばなりません。平衡とは何かというと、大雑把には「安定的で落ち着いた状態」のことです。例えば、波の立っていない落ち着いた海を想像してみてください。実は、身の回りの物質の中の電子の状態は、ほとんどこの平衡状態で理解できてしまいます。もちろん、電子は電流として流れたりもするのですが、これはいわば「ゆっくり流れる川」のようなもので、これの性質も実は平衡状態の情報から説明できることが知られています。ここで言っていることは全て、よくよく考えると相当不思議なことなのですが、物性物理学が明らかにしてきた知見なので、すみませんが一旦飲み込んでください。

-はい。

高三:では、非平衡とは何かというと、電子がめちゃくちゃ暴れ回っているような状態です。海の例えで言えば、波しぶきの立つ荒れ狂う海を想像してください。近年の技術革新により、物質自体を壊すことなく、その中の電子をそんな非平衡状態にすることが可能になりました。非平衡状態では、これまで研究されてきた平衡状態のルールでは起こり得なかったイレギュラーなことが起こります。この非平衡状態にある物質を研究するのが、私の専門分野です。

-イメージはおぼろげにできるんですが「物質を壊すことなく、電子を非平衡な状態にする」とどんなことが起きるんですか?

高三:例えば、温度を下げた金属において電気抵抗がゼロになる”超伝導”という現象が知られています。実際にMRIやリニアモーターカーに利用されている重要な技術なのですが、金属をとても冷やす必要があるんですね。ですが驚くべきことに、非平衡状態を使えば、室温でも超伝導を実現できたと主張する論文が発表されていたりします。これの真偽はさておき、こういった「これまでの物性物理学の常識」を超えた、一見あり得ないようなことが起きるかもしれないということです。

-そもそもルールが異なるから、まさに何が起きるか分からないんですね。

高三:非平衡物質相の物理はまだ分からないことばかりで、興味深い例がいくつか見つかってきた段階です。それらを統一的に理解することが次の重要な課題です。統一的なルール・法則が理解できれば、非平衡物質相を利用した、これまでの「限界」を突破する新材料やデバイス技術を作り出せるかもしれません。

-世界のルールの外側を研究してるようなものですね。

高三:「この世界を理解したい、そして、自分の見出した面白いアイデアを世界に発信したい」というのが私のモチベーションの根源にあります。この世界のルールを徹底的に理解し、そこから面白いアイデアを組み上げる… 例えるならレゴブロックで作品を作るみたいだと感じることもあります。

-あぁ。ミクロなレゴをどう組んで新しい物質にするかみたいな。

高三:はい、まさにそんな感じです!自分の抱いたアイデアや自分の世界観が、実際の「モノ」になる。それが世界を変える。すごくエキサイティングで楽しい仕事なんですよ。私たち物性物理学者は物質への理解を深めてきましたが、まだまだ分かっていないことが沢山ある。特に非平衡物質相は未知の領域です。これを明らかにすることで、デバイス技術や材料開発に貢献していけたらと思っています。私の理論的なアイデアが実際に役立つにはまだまだ、10年、20年、もしかしたら100年近くかかるかもしれませんが(笑)。

↑高三氏らの論文。1つ1つの論文で得られた成果が、未来の材料やデバイスのための大切な一歩となる。

これからの世界で失いたくないもの。

-では、最後の質問です。高三さんがこの先の世界で失いたくないものはなんですか?

高三:「好奇心」と「思いやり」です。物性物理学に限らず、学問はこれまで、好奇心を原動力にして、まだ見ぬ世界を描き出してきました。これからも人類の想像を超えるような未来に辿り着かせてくれるのは、好奇心だけだと信じています。そして、そうやって個々人の好奇心を通じて得た大切なものを、思いやりを持って伝えること・受け止めることが大事ですよね。全然知らない分野の人であっても「きっとこの人にはこの人のバックグラウンドがあって、すごく考えて言ってくれているんだ」とおもんばかること、リスペクトし合うことで初めて、調和した世界、平和な世界を築いていける考えています。科学者として、学問に携わる1人の人間として、こうしたことを大切していきたいと思っています。

Less is More.

実際に、今回お話をお聞きして、物性物理学の世界を知ると、まさに自分の常識が足下から揺らぐような衝撃があった。高三氏は「自分は“この世界の中で何よりも面白い”と思っている“物性理論”という分野について、幅広い人に伝わるように語る人があまりに少ないし、出来れば(僭越ながら)そのために何かしたい。」と書き込みをされていたことがある。今回のお話をされる様子も、本当に生き生きと、あらゆる知識を惜しみなく、お話いただけた。願わくば、このインタビューをきっかけに物性物理学に興味をお持ちいただけたら、これほど嬉しいことはない。

(おわり)


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