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IDGsは、私たちがもう一度 精神を語り合うきっかけになり得るか。鬼木基行氏インタビュー。

前回に引き続きIDGsの特集だ。今回は、IDGsをいち早く個人で学び、自身が所属する企業でも取り入れる試みをしている鬼木基行氏にお話をお伺いした。
SDGsから生まれた、人材育成のためのフレームワーク「IDGs」。実際にどんなもので、どうやって取り入れていけばいいのか、鬼木氏にお話をお聞きした。

鬼木 基行(おにき もとゆき) :プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株) (トヨタ自動車(株)とパナソニック(株)の合弁会社) GX本部 DX推進部 主査/データサイエンティスト IDGs Japan Hub Community 実行委員・地域づくり団体「みんなのお勝手さん」共同代表 全社DX推進の必要性から、「学習する組織」を用いた個人と組織の成長を実践し、近年はIDGsのフレームワークの活用を実践中。

↑鬼木さんのnote。IDGsを学ぶ過程も記されている。

-本日は、IDGsのことをお聞きできればと思います。

鬼木:SDGsとネーミングが近いので、覚えていただきやすい反面、読者の皆様も新しいフレームが増える恐怖心があると思います(笑)。

-正直、ものすごくあります(笑)。あぁ…またフレームが増えるのかと。

鬼木:わかります(笑)。でも、とても面白いですし、IDGsを学ぶことで多くの課題解決の糸口になると思いますので、ぜひ一緒に学んでいければと思います。

-ちょっと安心しました(笑)。今日はよろしくお願いいたします。


実務における課題解決からIDGsへ。

-IDGsの説明の前にまず、鬼木さんが何故IDGsに興味を持たれたのかからお聞きしてもいいですか?

鬼木:IDGsには、資格もありませんし、私の出自を含めてお話をした方が良いかと思いますので少し長くなりますが、そこからお話をさせてください。

-はい。

鬼木:元々大学で、応用物理や量子物理を学び、電気メーカーで液晶テレビの開発などを手がけていたんですよ。その後、エネルギーに興味があったこともあり、電池研究部署へ移籍し、リチウム電池のシステム開発を手がけ、その後現在も所属するトヨタ自動車株式会社へと転職。電池のシミュレーションモデルの研究に携わりました。

-現在も勤務されているんですね。

鬼木:現在は、トヨタ自動車(株)とパナソニック(株)が、電池の進化と安定供給を実現すべく共同で立ち上げた「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」に出向しています。そこで電池シュミレーションを手掛ける中で身につけた、コンピューティングスキルをベースにITシステムの立ち上げを担当することになったんです。同時に、当時AI・機械学習・データサイエンスに注目もされていたので、名古屋大学で1年間データサイエンスの勉強をしました。

-働かれながら学んでいたんですね。

鬼木:ちょうど、その直後くらいからデジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXの必要性に注目が集まっていました。DXを推進するにあたって、どういった観点で、どのように社内のデータを集積し、活用していくかの議論が始まった訳です。

-なるほど。

鬼木:一般的にデータサイエンスは、データを扱う力と個々人のドメインが持つ固有領域の経験や知識を掛け合わせることが、イノベーションを起こす鍵と言われています。そういう現場レベルの個々の知識、例えばどんなことがやりたくて、どこにナレッジが溜まっているのかを探り、それをどのように集積するかというところで、すごく障壁を感じていました。

-いわゆる、現場と理想の乖離という感じでしょうか。

鬼木:そうなんですよ。イノベーションの種になるような知識を集めるには技術オリエンテッドで「こういう技術があるから、これを使ってください」という議論では足りません。「なにがしたい」とか「なにに困っているか」などの生の声も非常に大事ですよね。現場のメンバーから、そういったデータ・情報をどう共有してもらうかが、課題だったんです。そんな中でピーター・センゲ著「学習する組織―システム思考で未来を創造する」という書籍に出会ったんです。まずは漫画版を読んだんですよね。作中で主人公の経営企画部の女の子が工場でヴィジョンとかミッションを語りかけながら、従業員にヒアリングするんですけど、全く相手にされないんです。当時の自分自身と全く同じ状況だ!って(笑)。

-(笑)。

鬼木:そこで、作品に倣って自分でも現場に寄り添って現場の困りごとを聞きながら、本当に必要なデジタルを考えていきました。

-あぁ同じ釜の飯を食うみたいな(笑)。

鬼木:まさにですね。その後、原書も読み漁り、翻訳者の小田理一郎先生が主催するプログラムに参加する中でIDGsを知りました。

-現状のビジネスにおける課題の中からIDGsに出逢われたわけですね。

長期的に世界を良くするために必要なフレームワーク「IDGs」。

-さて、単刀直入にIDGsってなんですか?

鬼木:IDGsは、Inner Development Goals=内面的な開発目標の略称で、Being/Thinking/Relating/Collaborating/Actingという5つのフレームで分けられ、それぞれに必要なスキルが定義された人材育成のフレームワークです。フレームワークと言ってもイメージしにくいと思いますので、個々人がこれからの時代に必要な能力、資質、スキルを身につけ、マインドを整えるための「ツール」と考えると、理解しやすいと思います。

-ひとまずは、スキルやマインドを磨くためのツールであると。

鬼木:現在は、5つのフレームの中で、スキルをどのようにトレーニングしていくべきか、議論が進んでいる最中で、非営利団体29Kという団体がIDGsに基づいたアプリケーションをリリースしています。アプリ中で30くらいのツールを通して、自主的にラーニングすることができます。

-へー!具体的に学べるのはわかりやすいですね。

鬼木:IDGs自体は、SDGsの文脈から生まれましたので、そこからお話します。ただ、前提としてIDGsは、ある種普遍的な枠組みであると思うので、SDGsはあくまでスタート地点と思っていただければと思います。

鬼木さんも執筆者として名を連ねる「IDGs 変容する組織」(経済法令研究会)を参考にしていただきたい。現状の鬼木氏のIDGsに関する思いが詰まっている。

鬼木:SDGsにおける基準や進め方、ターゲットといった議論は世界的に広がっています。しかし、いざこのSDGsを現実社会に実装しようとすると、設定したゴールに向けて推進するヒューマンリソースが世界的に足りていないことが問題になりました。では、そういった人たちをどう育てればよいか、どう定義すればよいかという課題解決に向けて、前述したピーター・センゲ氏、Googleと心理的安全性について研究されたエイミー・エドモンドソン氏、U理論を提唱しているC・オットー・シャーマー氏、成人発達理論のロバート・キーガン氏などをアドバイザーに迎え世界中の知を結集して研究が始まりました。

-かなり、組織論や心理学寄りの学者が結集していますね。

鬼木:組織開発寄りの研究者が議論する中で、「これってSDGsだけでなく、あらゆるビジネスにおいても推進する人が少ないんじゃないか?」という結論に至ったんですね。
そもそもSDGsは既に企業のビジネスと分けて考えるものではありませんよね。ということはあらゆるビジネスにおいてイノべーションを推進していけるヒューマンリソースが足りていないってことなんですよね。

-確かに。

鬼木:SDGsの大事な観点として、短期的な利益でなく、長期で次世代のことも考えてビジネスを推進する必要があります。ということで、SDGsのみならず、「世界を良くするために必要なフレームワーク」として開発されたのがIDGsです。

-なるほど!IDGsって、企業課題というより、個々人が磨くべきものなんですか?

鬼木:私自身は、現実の企業課題を解決するためにIDGsを学び始めたので、多少のバイアスがかかっているかも知れませんが、組織・個人の両者が考えていくべきだと思います。
日本企業ではまだ一般的ではないですが、グローバル企業においては、解決すべき対象や問題を、ひとつのシステムとして捉える「システム思考」を中心にビジネスが進んでいきました。「システム思考」を突き詰めた結果「システムの中に、自分がどう介入しているか」という問題に行き当たります。

-どういうことですか?

鬼木:まず、集団の仕組みに個人が参加することで、システム全体にも影響がありますよね。また、あるシステムに所属することで、自分自身のメンタルモデル形成にも影響があります。ですから、システムあるいは組織と個人というのは、双方的に影響を与え合う関係です。IDGsは個人のメンタルモデルが変わることで、システムに関与して、世の中の仕組みが変わるという考え方なんです。

-あぁ。企業も個人も変わらないといけないし、どちらかが変われば、どちらも変わるということですね。

東洋思想を西洋のフレームで捉え直す。

鬼木:面白いことに、この5つのフレームの中で語られていることは、非常に東洋的な考え方がベースになっているんです。諸子百家や老子・荘子の語っているような東洋思想を、非常に西洋的なフレームとスキルとして分類・整理しているイメージですね。

-思想的・精神的なものを磨くためのツールということですか?

鬼木:わかりやすいところでは、マインドフルネスのやり方や、価値観をベースにアクションに繋げるワークなども組み込まれていますので、実際のビジネススキルよりは、精神的な面に寄っていると思います。

-日本ですと、特に企業がそう言った精神的なものをビジネスで語る危うさも感じます。

鬼木:非常にわかります。日本のバックグラウンドを考えるととても伝えるのが難しいんですよね。変なバイアスが掛かって伝わってしまう。IDGsはスウェーデンを中心に生まれ、ヨーロッパで広まっています。そういった国々では宗教の話、政治の話が日常的に語られる文化がベースとしてありますよね。企業活動も思想・精神も、等しく社会の一部として捉えているように思います。

-あぁ。日本とは前提が違うんですね。

鬼木:そうなんです。こういった国々では現在、ビジネスにおいても東洋の文化である禅や瞑想などもフラットに学び、精神性をトレーニングするというフェーズに入っていると考えています。
日本でもマインドフルネスが一般化することで、ビジネスでも導入されやすくなりましたよね。「瞑想」って聞くと、どこか構えてしまいますが、「マインドフルネス」っていうとビジネス文脈で考えやすかったりします。日本におけるIDGsは、ウェルビーイング文脈で考えると身近に感じていただけるのではないかと思いますね。

-なぜ、西洋では、そういった思想的・精神的なものが、ビジネス上で重要視されているんでしょうか。

鬼木:言い方は難しいのですが、個人のメンタルモデル形成を見つめ直すには、プライベートにおける生活習慣や個人の生まれた環境、受けてきた教育と言ったものを視野に入れる必要がありますよね。もっと深いところで、どんな国で、どんな言語で、どのような土壌によって形成された文化で生活しているかということさえ関係があるわけです。日本のような水も資源も豊かな土壌で生活するのと、そう言った資源を持っていない土地で生まれるのでは、まるで違うメンタルモデルになるわけです。

-なるほど。

鬼木:それをもっともっと深く辿ると、人間とはなんなのか、生物としてどんなものなのか。そういった根源まで探っていくプロセスがIDGsと言えるかもしれません。
SDGsから考えても、できるだけ普遍的な判断をしていかないと地球として良い方向にはいけません。現在、自分自身のメンタルモデルで考えると、それはとても短期的な判断になってしまう。現状の自分という枠組みの中での正しさでしか思考できないんですよね。IDGsを学び続けることで、そこに気がつかせてくれます。

-確かに東洋的な考え方かもしれませんね。

鬼木:私自身もIDGsを独学する中で「自分のことは、一番自分が見えていない」ということに気が付かせてもらえました。認知バイアスに気が付けたり、自分自身の認識が変わります。例えば、Relating/Collaboratingと言ったフレームは、他人とのコミュニケーションを通して、自分自身のあり方に気がつけるように作られています。

-あぁ。あくまでコミュニケーションの手法ではなくて、コミュニケーションを通して、自分自身を見つめ直すための手法であると。

鬼木:そうですね。正義の反対は悪ではなくて、正義の反対は別の正義であるという意識を普段から持てるようになったのもIDGsを学ぶ中での気づきですね。常にそう言った、俯瞰した目線を持つことの大事さを学んでいるんだと思います。

日本企業はどのように取り入れるべきか?

-日本ではどのように取り入れていくべきだとお考えですか?

鬼木:自分自身も挑戦している過程ですが、いくつかやり方があると思います。企業として本流の事業と合流させやすいのは、Thinkingのフレームから学ぶことではないかと思いますね。このフレームには、複雑性の認識やクリティカルシンキングなど、現実のビジネスと直結する思考法が学べます。VUCAの時代においては、複雑さ不確定さをとらえていくことはすごく大事ですよね。

-それは、企業としてもすごくイメージしやすいですよね。

鬼木:他にも大手企業にもIDGsに興味を持っていただき、ウェルビーイング推進チームと有志の勉強会を企画しています。
社内でワークショップにもチャレンジました。参加した社員からは、業務にも積極性が生まれ、私生活も充実したと意見をもらいました。事例はまだまだ少ないのですが、すごくポジティブな結果として捉えています。

-さまざまな企業でも取り組みが始まりそうですね。

鬼木:1つ気をつけないといけないのが、そもそもこういうワークショップに参加したい社員は、もともとやる気があったりセルフマネジメントができている層なのでIDGsは必要ないのでは?という視点です。

-確かに(笑)。やる気のある人がより学ぶだけでは、今とあまり変わらないですもんね。

鬼木:そういうセルフマネジメントを意識していないボリュームゾーンをどう巻き込んでいけるかというのはこれからの課題ですね。IDGsは多くの人が学ぶことで、主体性が促されると思っています。多くの人が学ぶことによって、結果的に、世の中を長期的に良い方向に変革していけると思うんです。

-どういうことですか?

鬼木:IDGsを学ぶと、ある問題が起きるとまずはシステムに原因を求めると思うんです。物事と物事のつながりがどうなっているか、レバレッジポイントを探しに行きます。そのポイントに介入して、システムの変革を促し、関わる人たちのメンタルモデルを変える。
変革したシステムは、関わる人のメンタルモデルを変えます。そうして変わったメンタルモデルが、システムをより良く変えていく。このサイクルを多くに人と作っていけるのがIDGsの考え方です。木の根のように一人一人が少しずつ正しいと思う方向に向かいながら広がっていくイメージがあります。

-あぁ。それぞれ、自分らしく広がっていっても、1つの木を守っているような。システムがより良くなるほどに、IDGsを理解して学ぶ人が増えそうですね。

鬼木:私は「現代の百姓」を目指していまして。百姓というのは、農業という意味でなく「百の生業を持っている」という意味です。それぞれ、自由闊達に活動しながらも1つの木を育むようなイメージがあります。

システムだけでなく、こころでも学ぶ。

-ビジネスがシステムだけでなく、精神性に着目していくのは面白いですね。

鬼木:精神的な面だけでなく、体験もデザインされているのが、IDGsの面白いところです。例えば、Relatingのフレームには人とどう繋がるかだけでなく「自然や環境と人がどう繋がるか」という項目があります。ここには、ネイチャークエストやリトリートイベントなどを通して体験を増やすといったことが内包されています。

-へー!面白い!

鬼木:いくらSDGsを推進しようとしても、自然と接さないと、自然の循環には気がつけないですよね。企業に勤めていたり、都会で過ごしているとそういう体験が抜け落ちてしまう。IDGsを実践することで、そういったことに気が付くプロセスを促したりしています。

-確かに「環境」とか言っても、体験がないとあんまり具体的に理解できないですもんね。

鬼木:昔はもっと身近にそういう自然や環境が溢れていました。畑や田圃があったり、鳥の鳴き声がしたり、カエルが出てきたりという体験が当たり前でしたよね。

-特に都会ではそういう環境が失われつつあります。

鬼木:そうなんです。それに加えて、地域との関係も非常に希薄になってきています。職場と家、家と学校とか非常に居場所の選択肢が少ない。昔は、地域の中で人が育っていたんですが、今の社会には、地域が登場人物として出てこないんですよね。

-確かにそうですね。

鬼木:私自身、そういったことに危機感を感じて、4年ほど地域の中に家でも学校でもない、井戸端会議ができるようなサードプレイスを作る活動をしています。月一のイベントを手掛けたり、耕作放棄地の復活や、ソーラーパネルなを装備した防災拠点を作ったりしているんですね。

-素晴らしい活動ですね。

鬼木:IDGsは、企業や個人だけでなく、こういった「地域」みたいな文脈にとっても重要な考え方のベースだと思います。1つの可能性として、私のように企業をベースに生きる覚悟をすると、それは1つの地域にもなり得ますよね。IDGsを学び、職場で何を伝えて何を残すかを一人一人が自主的に考えることで、さまざまな対話が生まれ、お互いを知り、生きがいが生まれてきますし、そこはサードプレイスとしても成立するのではないかと思います。

-企業を1つの地域として捉えるのはすごくユニークですね。

鬼木:自分自身も地域の活動をしていて感じますが、日本では企業の位置付けが、すごく大きいじゃないですか。企業をベースに大きなムーブメントを作れるのは理想かもしれませんよね。

-鬼木さんは、なぜそれほど積極的に色々活動されたり、学ばれたりしているんですか?

鬼木:私自身、元々エネルギー関連の業務に携わっていたので、人間の営みの中でエネルギー問題、環境問題をどうしたらいいのだろうと考えていました。そんな中、コロナ禍において「経済を止めると、空気がキレイになる」ということが明らかになったりしましたよね。経済が止まると、空気汚染が軽減し、普段はインドから見えないヒマラヤが見えたことが話題になりました。

-えぇ。

鬼木:このニュースを見ても、経済に何かしらの制限を掛ければ、環境問題の解決につながるのでないかと思ったんです。もちろん、競争だったり、技術進化が悪いわけではありません。制限をかけるのは、私たちの心、人々のメンタルモデルなのではないかと。もっと便利に、もっと早く、もっと贅沢にって際限なく消費を続ける心のあり方を見直すことが、現実的ではないかと。私自身のエネルギー問題の結論として、テクノロジーだけでは解決できない問題だと思ったんですよね。

-心の問題なら、一人一人が日常的に気をつけられますもんね。

鬼木:こういった心のあり方において私は「足るを知る」というような東洋思想的な考え方が大事だと思っています。SDGsからIDGsが生まれ、西洋が東洋を学び出しているのも、そういうことに気がつき始めているからなんではないでしょうか。

-お話をお聞きして、IDGsは、東洋でも西洋でもなく、フラットに学べる印象を持てました。

鬼木:個人でもトライできるのもポイントです。むしろ個人の方が始めやすい。現在、様々な講師の方がフレームや項目に合わせた学習プログラムを組み始めているので、順を追って学んでいけます。そこで忘れていけないのは、1つの項目を学んでIDGsを理解したと思わないことですね。フレーム全体を見ながら"学び続けていく""自分自身に気づき続けていく"ことこそ大事だと思います。私自身は一生涯通して学び続けられる「道」のように捉えています。すごく楽しいですし、私も独学で学んでいるので色々な方と議論していきたいですね。

-日本もすごく乗りやすい文脈なのかもしれませんね。

鬼木:IDGsは、再び精神的なことを話し合う文化を日本が取り戻すチャンスでもあると思います。
日本にもようやくIDGsが届いてきましたが、日本が元々持っていた思想にも近い印象がある。日本の生活や言語には、もともとIDGs的な考え方が根付いているので、「教える」「学ぶ」というよりも眠っているものを起こしてあげるような感じなんですよね。
IDGsを学ぶことで、日本には世界に向けて発信できる文化がたくさん眠っていると思うんです。

-これからの夢を教えてください。

鬼木:私が、IDGsを学んだり、地域での活動をしているのは、子供やこれからの世代に胸を張って世界を受け渡していきたいからです。そのためにも学び続けていきたいなと思います。

これからの世界で失いたくないもの。

-では、最後の質問です。鬼木さんがこの先の世界で失いたくないものはなんですか?

鬼木:こうして顔を見て話すことや、リアルでつながるという、「身体性を伴うつながり」です。人と人の対話であったり、畑で土を触ること、そういった感覚を失いたくない。そして、それを大切だと思うメンタルモデルを無くさないようにしたいです。近年では、メタバースの技術も進んでいますし、仮想・仮想的なもので解決できることが増えました。安易に仮想的なものをベースとしたシステムを組むと、自分の思いもしないメンタルモデルが形成されてしまうことが起きてしまいます

-あぁ。システムによって、気がつかないうちにメンタルモデルが変わってしまうかもしれない。

鬼木:えぇ。「正しいもの」だけで、メンタルモデルが出来上がるわけではないです。だからこそ、身体の限界、人と人つながることの限界を知り、身体性を失わずにいられたらと思います。

Less is More.

鬼木氏は、非常に真摯にIDGsについて語ってくれた。「道」とお話しいただいたようにまさに求道者のように、心を律し1つずつ学んでいくような姿は、とても印象的だった。
これをきっかけにIDGs、ぜひ個人や所属する企業や団体でも、挑戦していただければと思う。

(おわり)

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