ハンドボールチーム・琉球コラソンが描くこれからのスポーツのあり方。代表・水野氏/GM石田氏インタビュー<後半>
ハンドボールチーム・琉球コラソンへのインタビュー後半は、2024年に発足予定のプロリーグへの期待や、さまざまな挑戦、そして未来のことをお聞きした。前半と合わせて楽しんでいただければ幸いです。
2024年スタートのプロリーグについて。
-そんな中で、2024年からハンドボールプロリーグが始まるというポジティブなニュースもあります。
水野:えぇ。プロ興行をやっていくリーグ(競技団体)がはじまります。琉球コラソンも、現状は登録しました。まずは、すべてのチームが実業団から脱却して、クラブチームとして独立していくのがプロリーグの第一段階ですね。
-琉球コラソンに関しては、すでにクラブチームとして独立して運営しているので、現在と変わらないようにも思います。
水野:そうなんですよね(笑)。とはいえ、新しいリーグができるのはすごくポジティブなことだと思っています。東京にも10数年ぶりに新しいチームができたり、関西にも新チームができます。そういう側面から見ると、ハンドボールは少しずつ盛り上がっていると思います。競技人口で比較すると、まだまだバスケットボールの10分の1くらいですし、色々な問題は山積みですが、これからが楽しみなスポーツなので、注目していただければ嬉しいですね。
-ちなみに、クラブチームとして独立して運営していくことで、良い点もあるとお考えですか?
水野:業界全体でクラブチームは増えてきていますが、私達だけが純粋にクラブチームとして運営しています。頑張れば頑張るほど自分達の生活が豊かになるのは、すごくいいことですよね。どちらがいいとも思いませんが、さまざまなチャレンジができる自由度の高さはクラブチームならではだと思います。
-確かにそれはすごくいいですね!
水野:実業団のチームは、会社の福利厚生の一環として立ち上がるので、ある意味では利益を追求しなくていいんですよね。そうすると興行で利益を上げなくていいので、実業団リーグですと試合数も増えませんし、協会全体でもわたしたちのようなクラブチームの意見が通りにくいんですよね。
-あぁ。状況がまるで違いますからね…。
水野:そうなんですよね。プロリーグに期待するだけではなく、各チームがクラブリーグとして独立していくこと、そして各県に1チームくらいはクラブチームができるようになること、ハンドボール業界全体が盛り上がるのかなと考えています。
クラファン・トークン…デジタルの活用。
-琉球コラソンは、本当に色々なことにもトライしていますよね。
水野:手探りですが、色々と試していますね。クラウドファウンディングに取り組んで、その後はFiNANCiE(フィナンシェ)を使ったトークンの発行などにもトライしています。
-スポーツ界のトークン活用は少しずつ事例が出てきていますよね。
水野:そうですね。始めたばかりですし、今はまだ利益が生まれたりするわけではないのですが、挑戦することが大事かなと思います。トークン発行してDAOでファンコミュニティを作って…という流れは、実際に現在ではまだファンクラブとの棲み分けができてないかなと思います。
-確かに、現状明確に定義分けできているDAOってあまりないですよね。
水野:そうなんですよね。現状ですとデジタルの活用は推進しますが、一方でリアルの強みを再認識もしていますね。
石田:琉球コラソンでは、運営はもちろん、選手やファンと地域の掃除などの活動をしているんです。
-素晴らしい活動ですね。
水野:そういうリアルな活動を共にしたファンって必ず試合に足を運んでくれますし、私たちのように浦添市など、地域に紐づいた活動だとアナログな集いの方が、まだまだアドバンテージがあると考えていますね。
途切れぬ熱意は何故?
-それにしても、これほど熱意を持ってクラブチームの運営を進めているのは本当に素晴らしいですね。
水野:僕はハンドボールは、好きだけど、練習は好きじゃなかったんです(笑)。チームのみんなと結びつきがあるからこそ、活動を続けてこれたと思います。ハンドボールって、スタメンと補欠でも交代がいくらでも自由なので、参加選手のほぼ全員が出場してみんなで助け合うんです。選手間の格差がないから、本当に素晴らしい仲間と出会えると思っています。
石田:そうですよね。ゼネラルマネージャーという大変な役を引き受けたのも、自分のためでなく、選手の環境を良くしたいからでしたし、自分の決断を振り返ると誰かのために頑張りたいという使命感がありました。これは、やっぱりハンドボールが仲間の大切さに気づかせてくれたからだと思いますね。
水野:何よりもハンドボールが楽しいという気持ちだけで続いてきたように思います。走って、飛んで、ボール投げてっていうシンプルな楽しさに満ちているんですよね。
石田:試合展開も早いし、点も沢山入るので、人と人がぶつかり合う迫力も魅力的ですよね。
水野:大変なことも多いですが、メジャースポーツが羨ましいという気持ちになったことはないんですよね。自分達で、一番面白いことを選んできたと思うんです。
琉球コラソンのこれから。
-お二人が琉球コラソンで叶えたい夢ってありますか?
水野:夢は日本一です。それは揺るぎません。日本一になるってことは、選手だけでなく運営としてもそれだけチームがポジティブに回っているということでもあると思うんです。「日本一になること」シンプルですが、この目標は叶えたいと思っています。
石田:自分の場合は、ジュニアチームやビジネスクラブなど新しいことを手がけている中で、今のコラソンがもっと地域に愛されるようになったらいいなと思います。現状だと、現実的な運営費などの問題もたくさんありますけど、もっともっと若い世代にも夢を見せれるチームでありたいし、そういう夢を見た子供たちがコラソンで活躍してくれる。そういった循環を創っていくのが僕の夢ですね。
これからの世界で失いたくないもの。
-では、最後の質問です。お二人がこの先の世界で失いたくないものはなんですか?
水野:家族も含めた仲間ですね。本当に人に恵まれてここまでやってこれたんです。仲間が何より大事だと思います。自分の仲間を助けられるような力をつけたいといつも思っています。
石田:僕は熱意ですね。コラソンもそうですし、家族や子供たちに対しても熱意を失いたいくない。ずっと熱意だけで動いてきた。衝突することもありますけどそれだけ二人とも同じくらいの熱意があって動いてきたからこそです。これからも熱意を失わないでいたいと思います。
Less is More.
ハンドボールやスポーツに限らず、これからどうやって経済循環を創っていくのか、日本全体の問題感ではないかと思う。
いち早く、自分達で独立して運営してきた琉球コラソンの姿には、学ぶべきことがたくさんあると感じた。現実をしっかりと見つめながら、未来へのトライを忘れないチームのあり方、ぜひこれからも注目していただきたい。
(おわり)